アンモナイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 14:27 UTC 版)
生態
アンモナイトの形態は多岐にわたり、これは彼らの持つ多様な生態を反映していると思われる[4]。アンモナイトは漏斗から海水を噴出して移動していたと考えられているが、その際にイカに類似した長い触腕を伸ばして獲物を捕獲する、あるいは触手の間に粘液による膜を張ってクモのように有機物を確保するなど、様々な方法で食物を摂取していたことが想像されている[11]。
一方でアンモナイトは被食者でもあった。アンモナイトの殻の中には鋭利な突起で引っ掛かれたような痕跡が認められるものがあり、これはイカに襲われた痕跡と推測されている。また、丸い穴が一定間隔で整列したアンモナイト化石も発見されている。これは白亜紀のモササウルス科爬虫類の噛み跡(あるいはカサガイの付着跡)と見られている。また、ジュラ紀の甲殻類であるエリオンも、アンモナイトの開口部に鋏を刺し込んで殻を破壊し、軟体部を切り刻むようにして捕食していたとされる[11]。また、魚類による攻撃も受けていた[11]。
化石としての特徴
生層序
化石の産出数が多いことに加え、年代によって形に差異が見られ、なおかつ、その特徴が信用に足る規則性を持っているため、示準化石として地質学上有用なものとなっている。すなわち、アンモナイトの化石は多くの年代地層で見出されるが、その種類は限定的・規則的であるので、各種のアンモナイト化石が発見される地層の相対的な年代をアンモナイトで特定できる、ということである[12][13]。
主な化石産地
世界
主な産地としては、モロッコ、ロシア、イギリス、ドイツ、カナダ、アメリカ合衆国、マダガスカル、日本が挙げられる。他に、フランス、スイス、ナイジェリア、カザフスタン、インドネシア、ペルーも知られる。
- ジュラシック・コースト(世界遺産登録名:ドーセットと東デヴォンの海岸) :イギリスのドーセット州とデヴォン州にまたがる中生代の化石の宝庫。アンモナイトはその象徴の一つである。
日本
日本では北海道が世界的産地の一つとして知られており、これまでに600種類以上が発見されている。特にアンキロセラス類の産地として有名。
主な展示場
日本
- 三笠市立博物館 :北海道三笠市。アンモナイト化石所蔵量日本一。
- いわき市アンモナイトセンター :福島県いわき市[14]。
- 三越 :日本橋本店および旧・新宿三越アルコット店(現・ビックカメラ新宿東口店)の一部内装等で使用されているイタリア産大理石の中にアンモナイトやベレムナイト等の化石が大量に含まれており、一部の化石には家族連れや子供向けに案内表示が添付されている。また六本木ヒルズハリウッドビューティープラザ、東京ミッドタウン地下の壁材にもアンモナイトを見つけることができる。
注釈
- ^ 何を最初期の種と見なすかによって出現時期も変わるが、統一的見解は出ていない。
- ^ エジプトの神アメンがギリシアに伝播したもので、神託をもたらす大神とされた。ユーピテル/ゼウスとしばしば同一視され、Jupiter Ammon / Ζευς Αμμων とも呼ばれた。
- ^ Hammon は Ammon の異形。 また、cornu は「角」の意。
- ^ 現生をアロノーチラス属 (Allonautilus) との2属構成とする説もある。
- ^ 軟体動物に特有の摂餌器官。柔軟な平紐状の膜の上に多くの微細な歯が整然と並び、その“舌”を前後に動かすことによって餌をこそぎ取る。
- ^ 通常は方解石などに置換されて彩りが失われるが、元と変わりないアラレ石(アラゴナイト)の組成のままで化石化する。
- ^ 正確な対数螺旋ではない。
- ^ 産地の演出物でもあるが。
出典
- ^ 『博物誌』第37巻第60章第167節
- ^ “ammonite”. Online Etymology Dictionary. 2021年10月31日閲覧。
- ^ “太陽神アモンの角”. みちのくはアンモナイトの宝庫. 東北大学総合学術博物館. 2021年10月31日閲覧。
- ^ a b c d e f 早川浩司「アンモナイト学」『化石』第74巻、日本古生物学会、2003年、85-88頁、doi:10.14825/kaseki.74.0_85。
- ^ a b c d e f 『小学館の図鑑NEO 大むかしの生物』小学館、2004年12月20日、70-71頁。ISBN 4-09-217212-5。
- ^ 近藤滋 (2018年3月30日). “白亜紀からの挑戦状”. Kondo Labo. 大阪大学大学院生命機能研究科近藤研究室. 2021年1月25日閲覧。
- ^ 佐藤英明「貝殻の螺旋と数理モデル」『Ouroboros 東京大学総合研究博物館ニュース』第24巻第2号、東京大学総合研究博物館、2020年5月19日。
- ^ “アンモナイトとオウムガイの違い”. 東北大学総合学術博物館. 2021年10月31日閲覧。
- ^ a b c 芝原暁彦『化石観察入門』誠文堂新光社、2014年7月22日、32-39頁。ISBN 978-4-416-11456-8。
- ^ 福田芳生「新・私の古生物誌(4) アンモナイトの進化古生物学(その2)」『The Chemical Times』第208号、2008年。
- ^ a b c d e f g h i 福田芳生「新・私の古生物誌(4) アンモナイトの進化古生物学(その3)」『The Chemical Times』第209号、2008年。
- ^ 長谷川四郎、中島隆、岡田誠『フィールドジオロジー2 層序と年代』共立出版、2006年1月25日、13-19頁。ISBN 978-4-320-04682-5。
- ^ “示準化石と示相化石”. 国立科学博物館. 2021年10月31日閲覧。
- ^ いわき市アンモナイトセンター - オフィシャルサイト
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