アンモナイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 14:27 UTC 版)
利用
化石、ときに宝石
アンモナイトの化石は、しばしば観賞用やアクセサリーとして販売・利用されている。古代生物の化石であることはそれ自体価値であり魅力であるし、地球上海底から高山まであらゆる場所で見つけられ採掘も容易であり、優れた造形もまた、人を惹きつけるものがある。風水で語られ、利用されることもある。さらには、宝石の輝きを持って産出するものがあり、それらは加工され、高値で取り引きされる。
アンモナイトの殻の中層にあって光沢を放つ真珠質層が損なわれることなく[注 6]化石化したアンモライトは、琥珀(こはく)・真珠・珊瑚(宝石サンゴ)とともに有機質(生物)起源の宝石の一つに数えられる。高いイリデッセンス効果によって蛋白石のような虹色の輝きを放つこの化石は世界各地から見出されるが、宝石と呼べる良質のものは米国とカナダにまたがるロッキー山脈の東斜面のみで産出し、とりわけカナダ・アルバータ州の約7000万年前の地層に由来のものは価値が高い。アンモライトは、古くはインディアンのブラックフィート族 (Piegan Blackfeet) が護符として用いていたという。世界的に知られるようになったのは1970年代以降で、現在最大の市場となっているのは日本、これに産地カナダ、その他が続く。ロッキー山脈のアンモライトはほぼ全てプラセンチセラス(la:プラケンティケラス、Placenticeras)属の1種に由来している。左(上段)の画像:アンモライト(未加工)。左(中段)の画像:アンモライト・ジュエリー。
アンモナイト・パイライト (Ammonite pyrite) は、殻の組織に黄鉄鉱(パイライト)が入り込んで結晶化したアンモナイト化石である。 これも宝石的価値のある良質のものは加工され、ペンダントトップ等のアクセサリーとして用いられる。左(下段)の画像:アンモナイト・パイライト。
芸術的モチーフ
アンモナイトの優れた造形は多分野の芸術家に愛され、多くの創作物がこれをモチーフとしている(右列上の画像の街灯は一例[注 8])。対数螺旋はレオナルド・ダ・ヴィンチやアントニ・ガウディの建築様式にも見られるが、ガウディの螺旋階段などは上から見ると段差の一つ一つがアンモナイトの連室を想起させ、巻き貝の殻とは違うアンモナイトの殻がモチーフであったとする話を説得力あるものとしている。右列下の画像は別のものであるが、これも対数螺旋の階段の一例。
注釈
- ^ 何を最初期の種と見なすかによって出現時期も変わるが、統一的見解は出ていない。
- ^ エジプトの神アメンがギリシアに伝播したもので、神託をもたらす大神とされた。ユーピテル/ゼウスとしばしば同一視され、Jupiter Ammon / Ζευς Αμμων とも呼ばれた。
- ^ Hammon は Ammon の異形。 また、cornu は「角」の意。
- ^ 現生をアロノーチラス属 (Allonautilus) との2属構成とする説もある。
- ^ 軟体動物に特有の摂餌器官。柔軟な平紐状の膜の上に多くの微細な歯が整然と並び、その“舌”を前後に動かすことによって餌をこそぎ取る。
- ^ 通常は方解石などに置換されて彩りが失われるが、元と変わりないアラレ石(アラゴナイト)の組成のままで化石化する。
- ^ 正確な対数螺旋ではない。
- ^ 産地の演出物でもあるが。
出典
- ^ 『博物誌』第37巻第60章第167節
- ^ “ammonite”. Online Etymology Dictionary. 2021年10月31日閲覧。
- ^ “太陽神アモンの角”. みちのくはアンモナイトの宝庫. 東北大学総合学術博物館. 2021年10月31日閲覧。
- ^ a b c d e f 早川浩司「アンモナイト学」『化石』第74巻、日本古生物学会、2003年、85-88頁、doi:10.14825/kaseki.74.0_85。
- ^ a b c d e f 『小学館の図鑑NEO 大むかしの生物』小学館、2004年12月20日、70-71頁。ISBN 4-09-217212-5。
- ^ 近藤滋 (2018年3月30日). “白亜紀からの挑戦状”. Kondo Labo. 大阪大学大学院生命機能研究科近藤研究室. 2021年1月25日閲覧。
- ^ 佐藤英明「貝殻の螺旋と数理モデル」『Ouroboros 東京大学総合研究博物館ニュース』第24巻第2号、東京大学総合研究博物館、2020年5月19日。
- ^ “アンモナイトとオウムガイの違い”. 東北大学総合学術博物館. 2021年10月31日閲覧。
- ^ a b c 芝原暁彦『化石観察入門』誠文堂新光社、2014年7月22日、32-39頁。ISBN 978-4-416-11456-8。
- ^ 福田芳生「新・私の古生物誌(4) アンモナイトの進化古生物学(その2)」『The Chemical Times』第208号、2008年。
- ^ a b c d e f g h i 福田芳生「新・私の古生物誌(4) アンモナイトの進化古生物学(その3)」『The Chemical Times』第209号、2008年。
- ^ 長谷川四郎、中島隆、岡田誠『フィールドジオロジー2 層序と年代』共立出版、2006年1月25日、13-19頁。ISBN 978-4-320-04682-5。
- ^ “示準化石と示相化石”. 国立科学博物館. 2021年10月31日閲覧。
- ^ いわき市アンモナイトセンター - オフィシャルサイト
固有名詞の分類
- アンモナイトのページへのリンク