VADの開発と臨床応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 20:51 UTC 版)
「補助人工心臓」の記事における「VADの開発と臨床応用」の解説
補助人工心臓(VAD)は1963年にドベイキーがドミンゴ・リオッタ(英語版)およびスタンリー・クロフォードの開発した左室補助人工心臓(リオッタ・クロフォード型LVAD)を42歳の患者に使用したのが初の臨床応用例である。リオッタは完全置換型人工心臓の研究と並行してVADの臨床応用に向けた研究開発を1961年よりベイラー医科大学にて行っており、その他1969年にリオッタ・クーリー型TAHが初めて臨床応用されている。 その後世界で研究開発が進められてきたが、当初は体外設置型VADが短期使用を目的として用いられてきた。しかし免疫抑制剤のサイクロスポリンの登場により心移植が急速に普及するとともにドナー不足の問題が顕在化し、心移植を待つ重症心不全患者が移植待機の期間中を如何にして乗り切るかが問題となった。そこで心移植までの「つなぎ」として、患者に適合するドナーが現れるまでの期間の循環補助としてVADを用いる移植への橋渡しとしての使用法(ブリッジ使用)が発展してきた。そして1990年代に在宅治療可能な第1世代拍動流植込型VADが臨床導入され、重症心不全に対して標準的に用いられるようになった。 心移植代替治療としての永久使用(DT: destination therapy)の適応に関しては、2002年に第1世代植込型VADのHeartMate VEが、2010年に第2世代植込型VADのHeartMate IIがアメリカ食品医薬品局(FDA)により永久使用の適応として承認された(ただし長期耐久性に限界がある点を考慮し、高齢や悪性腫瘍の合併など心移植適応とされない症例が適応とされている)。その後植込型VADの欠点を改善すべく開発が進められ、第2世代植込型VADは接触軸受で定常流ポンプの回転羽根車を支えるのに対し、新たに開発された第3世代植込型VADは磁気浮上や動圧浮上といった非接触軸受の機構を持つようになった。第3世代植込型VADの非接触軸受は接触軸受と比べて、軸受部の熱の発生による血栓形成や摩耗を軽減することによって、耐久性に優れる特徴を持つ。
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