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恐怖の墓所

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 21:00 UTC 版)

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Tomb of Horrors
コード S1
日本語題 恐怖の墓所
必要なルール アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ第1版
ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版
ダンジョンズ&ドラゴンズ第5版
レベル 10-14(第1版)
10-22(第4版)
高(第5版)
セッティング グレイホーク
製作者 ゲイリー・ガイギャックス
初版出版年 1978
ページ数 32
関連するモジュール
S1 S2 S3 S4
en:Return to the Tomb of Horrors

恐怖の墓所(きょうふのぼしょ、: Tomb of Horrors)はゲイリー・ガイギャックスダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)ロールプレイングゲーム向けに書いたアドベンチャーである。元々は1975年のOrigins 1コンベンション向けに書かれたもので、どんなチャレンジにも打ち勝てる強力なプレイヤーキャラクターを持っていると豪語する熟練プレイヤーの腕を試すことを目的としてデザインされた。スペシャルなシリーズを意味する「Sシリーズ」[1]の第一作であり「S1」のコードが付けられている。これまでにいくつかのバージョンが出版されており、初版は1978年、最新版は2017年に出版されたD&D第5版向けのシナリオ集 Tales from the Yawning Portal(日本版は2019年に出版された『大口亭綺譚[2][3])に収録されている。また2002年に出版された小説の原案にもなった。

モジュールのプロットはデミリッチアサーラックの墓を中心に展開される。プレイヤーキャラクターはアサーラックの破壊をめざし、多様な怪物との戦闘やトラップを通り抜けなければならない。本作は2004年のダンジョン誌のランキング企画「D&D歴代ベストアドベンチャー30」で3位に選ばれるなど名高いモジュールのひとつと見なされている。また、もっとも難易度の高いモジュールのひとつとしても知られている。後のダンジョンズ&ドラゴンズ製品に影響を与え、Sシリーズの他の三つのモジュール、S2 White Plume MountainS3 Expedition to the Barrier PeaksS4 Lost Caverns of Tsojcanth が後に続いた。

プロット要約

「恐怖の墓所」は、D&Dのキャンペーン・セッティングであるワールド・オブ・グレイホークの中のセットである[4]。「恐怖の墓所」の中で、死せる魔術師の墓に侵入しようとした冒険者たちは数々のトリックと罠に遭遇する[5]。シナリオの開始時に、プレイヤーたちは悪の魔術師 アサーラックアンデッドの姿となって古代の墓地に生きながらえていることを聞かされる。もとより強い力を持ったリッチであったアサーラックは、(プレイヤーに知られずに)頭蓋骨以外の肉体すら必要としない、アンデッドのより強力な形態であるデミリッチと化していた。プレイヤーキャラクターは墓所の中の致死性の罠から生き残り、精巧に隠された聖域への血路を開いて、デミリッチを打ち倒さなければならない。

モジュールは33の遭遇に分割されており、墓所への2つの偽物の入口から始まり、「デミリッチ・アサーラックの地下聖堂」で終わる。遭遇例としては「200本のスパイクで満たされた巨大な落とし穴」(セクション20)や、22番目の遭遇「金銀の霧の洞窟」:「霧は銀色で、ほのかな金色の流れに満ちている。視界は6フィートしかない。検出された場合はおぼろげに善良なオーラがある。これらの霧に足を踏み入れたものは毒に対するセーヴィング・スローをしなければならない。さもなければ温かい太陽の下の大地で清浄な空気を吸いこむことができるまで馬鹿者になる。」[6]などである。モジュールはアサーラックの破壊で終わり、いかなる後書きもない。

出版履歴

「恐怖の墓所」は、1975年のOrigins 1コンベンションでのD&Dトーナメントプレイのためにゲイリー・ガイギャックスによって書かれた[5][7][8]。ガイギャックスはオリジナルAD&Dのプレイテスターの一人であるAlan Lucienのアイデアからアドベンチャーを構築した。ガイギャックスが本作をデザインした目的は二つあった。ガイギャックス自身の説明によれば、第一に、「私のキャンペーンの中には何人か超熟練のプレイヤーたちがいて、これは彼らの腕前と──その時点で無敵さを誇っていたキャラクターの耐久性に対する更なる挑戦を意図したものだった。具体的に言えば、ロブ・クンツのキャラクターen:Robilarとアーニー・ガイギャックスのキャラクターen:Tenserの行く手をはばみたいと思っていた」ため、第二に「AD&Dのいかなるチャレンジも打ち負かせると豪語するファン(プレイヤー)に備える」ためだったという[9]

1978年、TSR, Inc.は、本作をAD&D第1版ルール用に改訂し出版した[7][10]。20ページの本と12ページの本、そして外装(初版は2色刷りの表紙だった)から構成されており[5]、冒険が進むにつれプレイヤーに表示されるイラスト本が特色となっている[5][11]。1981年には、32ページの同内容のブックレットに新しくフルカラーの表紙を付けて再発行された[5]。本作は高水準のシナリオシリーズの第一弾として評され[12]、1987年に製作された要約再編集版であるen:Realms of Horrorにも盛り込まれた。

1998年、本作はAD&D第2版ルール用のen:Return to the Tomb of Horrors(大幅に拡大された、元のモジュールの続編)の一部として再版された[11][13]ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは2005年のハロウィン向けに、オリジナル版をアップデートしたバージョン(オリジナル版の内容を多く残しており、アップデート部分はD&Dサプリメントen:Libris Mortisからのもの)をフリーダウンロードコンテンツとしてリリースした。このアップデート版はD&D3.5版ルール用にデザインされたものである[14]。また、「恐怖の墓所」はKeith Francis Strohmの同名の小説にノベライズされ、「グレイホーク・クラシック・シリーズ」(Greyhawk Classics series)としてウィザーズ・オブ・ザ・コーストから2002年に出版された[15]

2010年7月、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは「恐怖の墓所」の名前に関連した2つのアドベンチャーをリリースした。ひとつはで、en:Ari Marmellen:Scott Fitzgerald Gray執筆のハードカバーのスーパーアドベンチャーで、Return to the Tomb of Horrorsを出発点として用いて、オリジナルの墓の伝説を拡大発展させたものである[16]。2つめの「恐怖の墓所」はScott Fitzgerald Gray執筆の、オリジナルのモジュールをD&D第4版ルール向けに変換しアップデートしたもので、ダンジョンマスター報償プログラムの一部としてRPGAのメンバーにリリースされた[17]

2013年3月19日、Sシリーズの全4作を収録したハードカバーコレクション Dungeons of Dread がリリースされた[18]Lawrence Schickは序文でこのように書き記した。「デミリッチ・アサーラックのダンジョンは、ガイギャックスにとっては一種の思考実験だった。もし不死の魔術師が、欲深な冒険者の略奪から墓所を本当に守りたいと思っていたらどうするだろう。答えは当然、侵入者を(試すのではなく)抹殺するための仕掛けや罠を設置して地下聖堂を守る、のはずだ。もっと言えば、確固たる意志で臨んだパーティ以外は、諦めて、そっとしておこうと思うような壮絶なやり方を用いる、になるはずだ。[19]

2017年、第5版向けにアップデートされた「恐怖の墓所」が収録されたシナリオ集『大口亭綺譚』(Tales from the Yawning Portal)が再リリースされた[20][2](日本語版は2019年出版[3])。

評判

このD&Dアドベンチャーは、ゲーム・トーナメントで冒険者パーティーのウィットと不屈の精神をテストする目的で、1978年に製作された。「テスト」は「我々は狂犬病をテストする」という文章と同じ意味で使用されている。そう、ただ「手順を生き残れない」と主題を言う。
en:Lore Sjöberg of Wired on Tomb of Horrors.[21]

「恐怖の墓所」は2004年のダンジョン誌の「D&D歴代ベストアドベンチャー30」(30 Greatest D&D Adventures of All Time)で3位に位置付けられた[22]Dungeon Master for Dummiesは「恐怖の墓所」を10のベスト・クラシック・アドベンチャーのリストに挙げ、冒険の罠の多くはただ選択を誤ったというだけで容易にキャラクターを殺すだろうと示唆した[11]。Lawrence Schickは1991年に彼の本Heroic Worldsで、アドベンチャーを「とても難解なシナリオだ」と呼んだ[5]

Don Turnbullホワイトドワーフ誌13号で「恐怖の墓所」をレビューし、モジュールを10のうち10の評価を与えた。Turnbullはアドベンチャーの難易度についてコメントし、そのダンジョンを「繊細で広範囲に散りばめられた、陰湿かつ慎重に敷設された罠、そしてそれをどうにか回避できれば、彼らは幸運な冒険者になる」と指摘した[7]。彼はイラストブックレットが冒険に多大な雰囲気を追加することを感じ、作成済みのキャラクター名簿が有用であることも感じた。Turnbullは「DMが前もって学ぶことは、適切にそれを実行する必須の前提条件だが、これはGまたはDモジュールよりもはるかに悪賢く、非常に難しいと難しいだろう」とモジュールを註釈し、そして彼は、このモジュールは「優れたフォーマット、例として、包括的なシナリオを導入する方法。TSRの高品質はどのような方法でも妥協されたおらず、このS1モジュールでも大幅に改善されている」と、これらのモジュールに共通して持っていることを言った[7]

en:SF SiteのWayne MacLaurinはこのモジュールを「古典」にしてゲーマー「必携」と記述し、彼は高校時代にゲームをプレイしたときに、彼のグループのキャラクターのほとんどはすぐに死んだと言った。MacLaurinは「恐怖の墓所」が古典なのは難しさのためではなく、大量のモンスターを殺害することに関与しなかった最初のモジュールだったからである、それは「パズルと地図のコレクション」だったとその理由を説明した。本作がトラップをモンスターよりも重視したことは、当時のゲーマーには驚きだった[23]。死の罠を乗り越えるために一部のプレイヤーが使用したテクニックのひとつは、彼らの前に自分たちの所有するを歩かせることで、Wireden:Lore Sjöbergは「いささか英雄的とは言いかねる」と記述し、「指輪物語」のガンダルフバルログの餌として機能する牛50頭をモリアの坑道へ送ることができなかったことを指摘した[21]

「恐怖の墓所」はまた、後の「ダンジョンズ&ドラゴンズ」製品に影響を与えた。en:Jason Bulmahnは2007年のD&Dサプリメントen:Dungeonscapeにて、一部の罠のためのインスピレーションとして、モジュールと同様にインディ・ジョーンズを使用した[24]en:Black Isle Studios開発のコンピューターRPGen:Icewind Daleも本作の影響を受けている。Black Isle Studios部門ディレクターのen:Feargus Urquhartは「私たちは、恐怖の墓所のような、隅々に罠があり、壁の外にアンデッドがうろついているダンジョンへの最初の冒険の時のことをみんなが思い出すような何かを求めていた」と話した[25]

「恐怖の墓所」はアーネスト・クラインの小説『ゲームウォーズ』(原題:Ready Player One)で重要な役割を担っている。この小説は本モジュールのファンだった男が作成した仮想現実の世界を舞台としている。

脚注

  1. ^ Dungeons & Dragons FAQ”. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト (2003年). 2009年2月9日閲覧。
  2. ^ a b D&D第5版へのお誘い 『大口亭綺譚』” (2019年1月22日). 2020年5月14日閲覧。
  3. ^ a b ダンジョンズ&ドラゴンズ日本語版公式 Twitter” (2019年2月7日). 2020年5月14日閲覧。
  4. ^ Stark, Ed (2004). “Greyhawk”. en:30 Years of Adventure: A Celebration of Dungeons & Dragons. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト. p. 57. ISBN 0-7869-3498-0 
  5. ^ a b c d e f Schick, Lawrence (1991). Heroic Worlds: A History and Guide to Role-Playing Games. Prometheus Books. p. 113. ISBN 0-87975-653-5 
  6. ^ Gygax, Gary (1978). Tomb of Horrors. TSR. pp. 7. ISBN 0-935696-12-1 
  7. ^ a b c d Turnbull, Don (June/July 1979). “Open Box: Dungeon Module Review” (review). ホワイトドワーフ (ゲームズワークショップ) (13): 16–17. 
  8. ^ Denmead, Ken (2007年12月14日). “Top 10 D&D Modules I Found in Storage This Weekend”. Wired. 2009年8月20日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2009年1月26日閲覧。
  9. ^ ブルース・コーデル., Return to the Tomb of Horrors (1998), p. 3, ウィザーズ・オブ・ザ・コースト
  10. ^ Gygax, Gary (1978). Tomb of Horrors. TSR. pp. cover. ISBN 0-935696-12-1 
  11. ^ a b c Slavicsek, Bill; Rich Baker, Jeff Grubb (2006). Dungeon Master For Dummies. For Dummies. pp. 320. ISBN 978-0-471-78330-5. http://books.google.com/?id=pSG3zxln4FUC&pg=PA320&dq=%22White+Plume+Mountain%22 2009年2月12日閲覧。 
  12. ^ Livingstone, Ian (1982). Dicing with Dragons, An Introduction to Role-Playing Games (Revised ed.). en:Routledge. ISBN 0-7100-9466-3  (preview)
  13. ^ Tomb of Horrors (Revised) (PDF)”. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト. 2009年1月26日閲覧。
  14. ^ Cordell, Bruce R. (October 31, 2008). Adventures: Tomb of Horrors (revised). ウィザーズ・オブ・ザ・コースト. Retrieved on January 21, 2008.
  15. ^ Strohm, Keith Francis (2002). The Tomb of Horrors. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト  UK ISBN 0-7869-2702-X. US ISBN 0-7869-2727-5.
  16. ^ Tomb of Horrors (4e)”. dmsguild.com. 2020年5月12日閲覧。
  17. ^ DM Rewards Program”. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト. 2011年3月24日閲覧。
  18. ^ Dungeons of Dread”. Wizards of the Coast. 2013年6月22日閲覧。
  19. ^ Dungeons of Dread: Tomb of Horrors”. Wizards of the Coast. 2013年6月22日閲覧。
  20. ^ Tales from the Yawning Portal”. Wizards of the Coast (2017年2月21日). 2017年2月21日閲覧。
  21. ^ a b Sjöberg, Lore (2008年3月12日). “What Real-Life Dungeon Exploration Might Look Like, Graduate Students in Tow”. Wired. 2009年1月20日閲覧。
  22. ^ Mona, Erik; Jacobs, James (November 2004). “The 30 Greatest D&D Adventures of All Time”. Dungeon (en:Paizo Publishing) 116. 
  23. ^ MacLaurin, Wayne (1999年). “Return to the Tomb of Horrors”. en:SF Site. 2009年1月26日閲覧。
  24. ^ Carroll, Bart (2007年3月5日). “Product Spotlight: Dungeonscape”. ウィザーズ・オブ・ザ・コースト. 2009年1月26日閲覧。
  25. ^ Black Isle Studios Presents Icewind Dale”. Spong (2000年5月11日). 2009年1月26日閲覧。

書誌情報

外部リンク


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