K[X] の因数分解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/07/22 09:36 UTC 版)
多項式環の次の性質はもっと深いものである。今日では算術の基本定理と呼ばれる「任意の自然数が素数の積に一意的に分解することができる」という事実は、ユークリッドによって既に知られており、その証明は自然数の最大公約数を導き出すユークリッドの互除法に基づくものであった。互除法のアルゴリズムはいずれの段階においても、自然数の組 (a, b) (a < b) を r を a を b で割ったあまりとして新しい組 (b, r) に取り替え、出てくる数をより小さくする。ガウスはこの剰余つき除算の手続きを多項式に対しても定義できることに気付いていた。与えられたふたつの多項式 p, q (q ≠ 0) に対し p = u q + r {\textstyle p=uq+r} と書くことができる(除法の原理)。ここで商 u と剰余 r は多項式であり、r の次数は q のそれよりも小さい。またこのような性質を持つ分解は一意である。ここでは多項式の次数が整数の除算における整数の大きさの類似の役割を担う。次数は無限に減少することはできないので、最終的には互除法の除算は終了し、最後の零でない剰余が最初のふたつの多項式の最大公約元である。この方法により、ガウスは整数に対する算術の基本定理を厳密に証明すると同時に、それを多項式に対して一般化することに成功した。ユークリッドの互除法の類似が許される可換環はユークリッド環と呼ばれ、それらは素因子への一意的な分解が可能な分解環 (anneau factoriel) あるいは一意分解整域 (unique factorization domain) と呼ばれる環になる。つまり、多項式環 K[X] は分解環であり、ユークリッド整域である。 多項式の剰余付き除算の別の系として、K[X] の任意の零ではない真のイデアル I は単項生成であるという事実がある。つまり I は、I に帰属する任意の多項式の最大公約元である唯一つの非零多項式 f の倍元全体からなる。したがって、多項式環 K[X] は主イデアル整域である。
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