多項式の次数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 08:06 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動数学、初等代数学における多項式の次数(じすう、英: degree)は、多項式を不定元の冪積の線型結合からなる標準形に表すとき、そこに現れる項のうち最も高い項の次数を言う。ここに、項の次数とは、それに現れる不定元の冪指数の総和である。次数の同義語として「位数」「階数」(order) が用いられることもあるが、今日的には別の意味に取られるのが普通だろう。
例えば、多項式 7x2y3 + 4x − 9 は三つの項からなる。多項式の記法に関する通常の規約により、この多項式は厳密には 7x2y3 + 4x1y0 − 9x0y0 を意味することに注意する。最初の項の次数は 5(冪指数 2 と 3 の和)であり、二番目の項の次数は 1, 最後の項の次数は 0 であるから、この中で最高次の項の次数である 5 がこの多項式の次数ということになる。
上のような標準形になっていない多項式の次数の決定に際しては、たとえば (x + 1)2 − (x − 1)2 のような場合、積は分配法則に従って展開し、同類項をまとめて、まずは標準形に直さなければならない。いまの例では (x + 1)2 − (x − 1)2 = 4x だから次数は 1 である(二つの二次式の和をとったにもかかわらず、である)。しかし、多項式が標準形の多項式の「積」に書かれている時には、積の次数は各因子の次数の総和として計算できるから、必ずしも展開・整理は要しない。
次数 | 名称 | 補足 |
---|---|---|
(−∞)-次 | zero | 零多項式(次数は後述) |
零次 | constant | 定数多項式 |
一次 | linear | 一次函数も参照 |
二次 | quadratic | 二次函数も参照 |
三次 | cubic | 三次函数も参照 |
四次 | quartic, biquadratic | 四次函数も参照 |
五次 | quintic | |
六次 | sextic, hexic | |
七次 | septic, heptic | |
八次 | octic | |
九次 | nonic | |
十次 | decic |
多項式の次数の日本語名称は、一貫して次数の値に接尾辞「-次」をつける。英語名称は、いくつかの例外はあるが基本的にラテン語の序数詞に形容詞を作る接尾辞の -ic を付けて表す。次数と不定元の数はきちんと区別されるべきであって、こちらには接尾辞「-元」あるいは「-変数」を付ける(英語名称ではラテン語配分数詞に接尾辞 -ary が付く)。例えば x2 + xy + y2 のような二つの不定元に関する次数 2 の多項式は「二元二次」("binary quadratic") であると言い、二元 (binary) が不定元の数が 2 であることを、二次 (quadratic) 次数が 2 であることを言い表している[注釈 1]。もう一つ、項の数も明示するなら「-項式」(英語名称では ラテン配分数詞に接尾辞 -nomial)を付ける。単項式 (monomial), 二項式 (binomial) あるいは三項式 (trinomial) など。つまり、例えば x2 + y2 は「二元二次二項式」("binary quadratic binomial") である。
以下しばらくは一元多項式に関して述べる。
例
- 多項式 3 − 5x + 2x5 − 7x9 は九次多項式。deg(3 − 5x + 2x5 − 7x9) = 9.
- 多項式 (y − 3)(2y + 6)(−4y − 21) は三次多項式。deg((y − 3)(2y + 6)(−4y − 21)) = 3.
- 多項式 (3z8 + z5 − 4z2 + 6) + (−3z8 + 8z4 + 2z3 + 14z) は見かけ上八次だが、八次の項が打ち消されるので実際には五次である。deg((3z8 + z5 − 4z2 + 6) + (−3z8 + 8z4 + 2z3 + 14z)) = 5.
これらの例を、計算・整理して、降冪の標準形に直せば、順に
- −7x9 + 2x5 − 5x + 3;
- −8y3 − 42y2 + 72y + 378;
- z5 + 8z4 + 2z3 − 4z2 + 14z + 6
となることに注意せよ。
多項式の演算に対する振舞い
![]() | この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。2014年9月) ( |
与えられた体に係数をとる「次数が高々 n の」多項式全体の成す集合がベクトル空間を成すことは、多項式の和と定数倍に関して次数の振舞いを見ることで確認できる。しかし同様に、積に関する振舞いを見ることで、そのような集合が環とならないことも確認できる。
加法に対して
二つの多項式の和(これには差も含めた意味で言う)の次数は、それらの多項式の次数のうち大きい方を超えない。式で書けば
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