Fractal dimensionとは? わかりやすく解説

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フラクタル次元

(Fractal dimension から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/18 08:39 UTC 版)

コッホ雪片の最初の繰り返し4回

フラクタル次元(フラクタルじげん、: fractal dimensionD)とは、フラクタル幾何学において、より細かなスケールへと拡大するにつれあるフラクタルがどれだけ完全に空間を満たしているように見えるかを示す統計的な量である。

フラクタル次元にはさまざまな定義がある。最も重要な理論的フラクタル次元はレニー次元ハウスドルフ次元パッキング次元英語版の3つである。実用上ではボックス次元英語版相関次元英語版の2つが実装が容易なこともあり広く使われている。古典的なフラクタルのいくつかではこれらの次元は全て一致するが、一般にはこれらは等価なものではない。

例えば、コッホ雪片の位相次元は1であるが、これは決して曲線ではない――コッホ雪片上の任意の2点の間の弧長は無限大である。コッホ雪片の小片は線のようではないが、かといって平面やその他の何かの一部のようでもない。1次元の物体であると考えるには大きすぎるが、2次元の物体であると考えるには薄すぎるとも言え、ではその次元はある意味1と2の間の数値として表されるのではないかという考察に導かれる。これがフラクタル次元の概念を想像してみる簡単な方法の1つである。

具体的な定義

図1 単位図形による次元の定義[1]

フラクタル構造を生成するアプローチは主に2つある。1つは単位となる図形から成長させる方法(図1)、もう1つはシェルピンスキーの三角形のようにもととなる構造を続けて分割してゆく方法(図2)である[2]。ここでは第2のアプローチによってフラクタル次元を定義する。

ユークリッド次元 D に存在する線形サイズ1の図形があり、そのサイズを各空間方向に 1/l に縮めると、もとの図形を埋めるには N = lD 個の自己相似図形が必要となる(図1)。しかしながら、

図2 もとの構造を再帰的に分割することで得られるシェルピンスキーの三角形

同様に、コッホ雪片のフラクタル次元は

腸壁の顕微鏡写真

フラクタル次元の概算は、物理学[5]、画像解析[6][7]、音響学[8]リーマンゼータ関数の零点[9]、(電子)化学プロセス[10]、医学[11]など、さまざまな領域で用いられている。応用の一例として、人間の大腸粘膜表皮はフラクタル的な構造を示し、これは表面積を最大化するためと考えられるが、病変するとそのフラクタル次元に変化が現れる。良性腫瘍では1.38、癌では1.50前後となり有意差があるとする研究があり、サンプルのフラクタル次元概算による客観的な診断が目指されている[11]

実際の次元の概算は数字的もしくは実験上のノイズに非常に敏感であり、また特にデータの量の制限に影響されやすい。極めて多くのデータ点の数が得られるのでない限り避けようのない限界が存在するので、 フラクタル次元の概算に基づく主張、特に低次元での動的挙動の主張には注意が必要である。

脚注

  1. ^ a b Fractals & the Fractal Dimension
  2. ^ Vicsek, Tamás (2001). Fluctuations and scaling in biology. Oxford [Oxfordshire]: Oxford University Press. ISBN 0-19-850790-9 
  3. ^ 高安(1985) p. 894
  4. ^ 高安(1985) p.906
  5. ^ B. Dubuc, J. F. Quiniou, C. Roques-Carmes, C. Tricot, and S. W. Zucker (1989). “Evaluating the fractal dimension of profiles”. Phys. Rev. A 39: 1500–12. doi:10.1103/PhysRevA.39.1500. 
  6. ^ P. Soille and J.-F. Rivest (1996). “On the validity of fractal dimension measurements in image analysis”. Journal of Visual Communication and Image Representation 7: 217–229. doi:10.1006/jvci.1996.0020. http://mdigest.jrc.ec.europa.eu/soille/soille-rivest96.pdf. 
  7. ^ Tolle, C. R., McJunkin, T. R., and Gorisch, D. J. (January 2003). “Suboptimal Minimum Cluster Volume Cover-Based Method for Measuring Fractal Dimension”. IEEE Trans. Pattern Anal. Mach. Intell. 25 (1): 32–41. doi:10.1109/TPAMI.2003.1159944. 
  8. ^ P. Maragos and A. Potamianos (1999). “Fractal dimensions of speech sounds: Computation and application to automatic speech recognition”. Journal of the Acoustical Society of America 105 (3): 1925. doi:10.1121/1.426738. PMID 10089613. 
  9. ^ O. Shanker (2006). “Random matrices, generalized zeta functions and self-similarity of zero distributions”. J. Phys. A: Math. Gen. 39: 13983–97. doi:10.1088/0305-4470/39/45/008. 
  10. ^ Ali Eftekhari (2004). “Fractal Dimension of Electrochemical Reactions”. Journal of the Electrochemical Society 151 (9): E291–6. doi:10.1149/1.1773583. 
  11. ^ a b 佐藤明人「大腸上皮性腫瘍腺口形態(pit pattern)のフラクタル解析 : pit patternの定量評価と病理組織診断との対比」『新潟医学会雑誌』第119巻第8号、新潟医学会、2005年8月、464-473頁、 CRID 1050001339229699840hdl:10191/3183ISSN 002904402023年8月18日閲覧 

参考文献

関連項目




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