F7F (航空機)とは? わかりやすく解説

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F7F (航空機)

(F7Fタイガーキャット (戦闘機) から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/18 22:42 UTC 版)

F7F タイガーキャット

飛行するF7F-2N
(1944年ないし45年撮影)

F7F タイガーキャットGrumman F7F Tigercat )は、アメリカグラマン社が開発しアメリカ海軍第二次世界大戦末期から戦後にかけて運用した双発艦上戦闘機

愛称の「タイガーキャット(Tigercat)」はトラネコの意[1]

概要

グラマン社が不採用に終わったXF5Fスカイロケットの開発経験を生かして開発した、航空史上でも極めて珍しい制式採用されたレシプロ双発艦上戦闘機となった。

歴史

アメリカ海軍は、日本との戦争を睨んで建造計画を進めていた大型航空母艦(後のミッドウェイ級航空母艦)に搭載する双発艦上戦闘機の開発をグラマン社に依頼した。グラマン社は以前に試作双発艦上戦闘機XF5Fを開発・試作しており、採用こそされなかったものの大きな技術の蓄積を得ており、この計画には最適であるとされた。

双発の大型戦闘機であり、制空任務のみならず地上攻撃任務や対艦攻撃任務も視野に入れられており、可能であれば雷撃能力を持つ事が要求されていた[1]。中翼配置(機体構造的には高翼配置に近い)の機体に首輪式の降着装置を持ち、空母上での運用を考慮して左右主翼は上方に折り畳みが可能である。武装は12.7mm機関銃4門を機首に、20mm機関砲4門を主翼に装備している。開発当時の艦上機としてはかなりの大型機だが、2,100馬力のエンジン2基により機動性は高く、F7F-1で最大速度は732km/h(高度6,100m)、上昇率1,320m/minにも達する。

1941年6月に原型機2機の開発契約が結ばれ、社内名称G-51として開発が開始されたが、太平洋戦争が勃発したため初飛行前にまず海兵隊向けとして500機が発注され、F7F-1の制式番号が与えられた。試作機は1943年11月2日に初飛行したが、海軍はグラマン社にまずF4FF6Fの両艦上戦闘機とTBF艦上攻撃機の生産を優先するよう通達したため、F7Fの生産は後廻しとされた。その結果第二次世界大戦中に若干数が就役したものの、実戦を経験することなく終戦を迎えた。

生産契約は250機で打ち切られたが、生産そのものは戦後の1946年11月まで続けられ、各種の派生型と改良型も開発されて朝鮮戦争に投入され、夜間戦闘機として、また戦術偵察機として活躍した。

F7Fは重量過大と着陸速度が速すぎることが問題とされ、昼間戦闘機型は陸上基地での海兵隊により運用され、航空母艦で運用されたのは夜間戦闘機型に限られた。

1950年代に入ると急速に退役が進み、多くの機体が民間に払い下げられ、森林火災消防機に改造されて運用された。

諸元

機体名 F7F-3[2] F7F-3N[3]
全長 45ft 4.5in (13.83m) 46ft 10.5in (14.29m)
全幅 51ft 6in (15.70m) → 32ft 4in (9.86m) ※主翼折り畳み時
全高 16ft 7in (5.05m)
翼面積 455ft² (42.27m²)
プロペラ[4] ブレード4枚 直径13ft 2in (4.01m) ×2
エンジン Pratt & Whitney R-2800-34W (2,100Bhp 最大:2,400Bhp) ×2
空虚重量 16,270lbs (7,380kg) 16,400lbs (7,439kg)
戦闘重量 21,720lbs (9,852kg) 21,476lbs (9,741kg)
翼面荷重 233.07kg/m² 230.45kg/m²
燃料[注釈 1] 455gal (1,722ℓ) 375gal (1,420ℓ)
最高速度 435mph/22,200ft (700km/h 高度6,767m)[注釈 2] 423mph/21,900ft (681km/h 高度6,675m)[注釈 3]
上昇能力 4,530ft/m S.L. (23.01m/s 海面高度)
20,000ft (6,096m) まで5分24秒
4,580ft/m S.L. (23.27m/s 海面高度)
20,000ft (6,096m) まで5分12秒
実用上昇限度 40,700ft (12,405m) 40,800ft (12,436m)
航続距離[注釈 4] 1,490st.mile (2,398km) ※1×150galタンク搭載時
1,830st.mile (2,945km) ※1×300galタンク搭載時
2,560st.mile (4,120km) ※FERRY 搭載燃料1,055gal (3,994ℓ)
1,260st.mile (2,028km) ※1×150galタンク搭載時
1,595st.mile (2,567km) ※1×300galタンク搭載時
2,370st.mile (3,814km) ※FERRY 搭載燃料975gal (3,691ℓ)
武装 AN-M3 20mm機関砲 ×4 (弾数計800発)
AN/M2 12.7mm機関銃 ×4 (弾数計1,200発)
AN-M3 20mm機関砲 ×4 (弾数計800発)
外部兵装 胴体下:2,000/1,600lbs爆弾×1、Mk.13魚雷×1、1,860/1,600lbs機雷×1、Tiny Tim×1
翼下:1,000/500/250/100lbs爆弾×2、650/325lbs爆雷×2、1,000lbs機雷×2、Tiny Tim×2
F7F-3N 3面図

派生型

解説は航空ファンイラストレイテッドNo.73 『第二次大戦米海軍機全集』「グラマンF7F タイガーキャット」(文林堂)より、

XF7F-1/G-51
原型機。2機製作。発動機はR-2800-27(水噴射装置無し)で、最高速度は690km/h(6,700m)。上昇率1,280m/min。
F7F-1
最初の生産型。発動機が水噴射装置付きのR-2800-22Wである以外、ほぼ原型機と同一。1944年4月初飛行、31機生産。F7F最速の機体。
F7F-1N
F7F-1にAN/APS-6機上レーダーを搭載した夜間戦闘機型。レーダー搭載の代償に機首12,7mm機銃は撤去されているが、機銃口が残されているので外観からは区別が付かない。
F7F-2N
初期名称、F7F-2。レーダー操作員の搭乗する複座夜間戦闘機型。機首機銃は非装備。試作機1機がF7F-1から改装されたほか、65機生産。
F7F-2D
-2Nを終戦後、全機改造してドローン母機にした機体。
F7F-3
発動機を-22Wと同馬力ながらも高空性能の良い、R-2800-34Wエンジンを搭載した強化型。-1よりは速度は低下したが、上昇率は勝る。
F7F-3E
レーダーと爆撃照準器を装備する夜間攻撃型。計画のみで実現しなかった。
F7F-3K
無線操縦によるドローン機。1機のみ改造。
F7F-3N
-3型の複座夜間戦闘機型。新型の大型レーダーSCR-720を備えるので機首部分が大変化している。機首機銃は非装備。
F7F-3P
写真偵察機に改造された機体。機体五箇所にカメラを装備。偵察機であるが、20mmと12.7mm全ての固定武装は健在で空戦可能。61機が改造された。
F7F-4N
最終生産型。AN/APS-19レーダーを搭載した複座夜間戦闘機型。12機生産。機首機銃非装備。重量増大で速度は702km/h(7,470m)まで低下している。

XP-65

アメリカ陸軍XP-50の開発が失敗に終わった時点で、グラマン社がXF5Fに続いて開発に着手していた試作双発艦上戦闘機(後のG-51/XF7Fとなる機体)を陸上型としたものにXP-65の名称を与え、2機の試作発注を行った。

事実上同一の機体が陸海軍双方から発注された形になったが、双方の仕様には多分に異なる個所があり、同一の機体で両方の要求を満たすことは困難であることから、どちらかの開発を優先させなければ開発計画が大幅に遅延する可能性が生じた。

海軍のXF7Fに対する発注は陸軍よりも1ヶ月遅れていたため、このままではXF7FよりもXP-65の開発が優先されかねないと懸念した海軍は、陸軍上層部に対してXP-65の開発計画をキャンセルするよう要求した。

陸軍でもこのまま海軍仕様と並立したままでの機体の開発は計画の遅延を招くだけと判断し、海軍の要求を受け入れXP-65の開発計画を1941年にキャンセルした。

現存する機体

所有者が変更している場合がある。
型名     番号    機体写真     国名 所有者 公開状況 状態 備考
F7F-3 80373
C.115
N7654C
アメリカ フロリダ州 国立海軍航空博物館[1] 公開 静態展示 [2]
F7F-3N 80374
C.116
N7629C
写真 アメリカ デラウェア州 ピストゥ・アウェイN7629C有限会社
(Pissed Away N7629C LLC)
非公開 飛行可能 [3]
F7F-3N 80375
C.117
N379AK
アメリカ ワシントン州 ジェイムズ・チャールズ・スラタリー 非公開 飛行可能 [4]
F7F-3N 80382
C.124
アメリカ カリフォルニア州 プレーンズ・オブ・フェイム航空博物館[5] 公開 保管中 [6]
F7F-3P 80390
C.132
N700F
アメリカ テキサス州 ルイス・エア・レジェンズ[7] 公開 飛行可能 [8]
F7F-3 80404
C.146
アメリカ フロリダ州 ファンタジー・オブ・フライト 公開 保管中
F7F-3 80410
C.152
アメリカ アリゾナ州 ピマ航空宇宙博物館[9] 公開 静態展示 [10]
F7F-3 80412
C.154
N207F
アメリカ カリフォルニア州 パームスプリングス航空博物館[11] 公開 飛行可能 [12]
F7F-3P 80425
C.167
N909TC
アメリカ アヴスター株式会社(Avstar Inc.) 非公開 飛行可能
F7F-3 80483
C.225
N6178C
アメリカ ワシントン州 ヒストリック・フライト財団[13]
(Historic Flight Foundation)
公開 飛行可能 [14]
F7F-3P 80503
C.245
N805MB
アメリカ テキサス州 ルイス・エア・レジェンズ[15] 公開 飛行可能 [16]
F7F-3 80532
C.274
N7195C
写真 アメリカ アーカンソー州 ローレンス・クラシックス有限会社
(LAWRENCE CLASSICS LLC)
非公開 飛行可能 [17]

登場作品

ゲーム

『鋼鉄の咆哮 ウォーシップコマンダー』
アメリカ型の航空機として登場。夜間飛行は不可能で爆弾は搭載されず、機関砲のみの装備となっている。

参考文献

  • 『世界の傑作機 No.94 グラマンF7F/F8F』(文林堂、2002年) ISBN 4-89319-094-6
  • 航空ファン イラストレイデッドNo73『第二次大戦米海軍機全集』(文林堂)

脚注

注釈

  1. ^ 搭載可能燃料は
    F7F-3:機体内燃料タンクに455gal (1,722ℓ)、落下増槽タンクを300gal (1,136ℓ) ×1 + 150gal (568ℓ) ×2の合計1,055gal (3,994ℓ)
    F7F-3N:機体内燃料タンクに375gal (1,420ℓ)、落下増槽タンクを300gal (1,136ℓ) ×1 + 150gal (568ℓ) ×2の合計975gal (3,691ℓ)
  2. ^ MK9 (ロケットランチャー) 及びパイロン装備時は428mph/22,000ft (689km/h 高度6,706m)、MK9未装備時は435mph/22,200ft (700km/h 高度6,767m)、MK9・パイロン共に未装備時は447mph/22,300ft (719km/h 高度6,797m)
  3. ^ MK9 (ロケットランチャー) 及びパイロン装備時は418mph/21,900ft (673km/h 高度6,675m)、MK9未装備時は423mph/21,900ft (681km/h 高度6,675m)、MK9・パイロン共に未装備時は435mph/22,200ft (700km/h 高度6,767m)
  4. ^ 航続距離は燃料消費量+15%の補正後に算出されている

出典

  1. ^ a b 古田和輝『世界の戦闘機図鑑 1915-1945』株式会社ダイアプレス、2022年4月1日、89頁。 
  2. ^ F7F-3 Tigercat Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
  3. ^ F7F-3N Tigercat Specifications AIRPLANE CHARACTERISTICS & PERFORMANCE
  4. ^ Propeller:HAMILTON STANDARD C.S.、Blade:No.6501A-O (×4)、Diameter:13ft 2in (4.01m)、Area:12.65m²

関連項目




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