DNA鑑定に関する批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:35 UTC 版)
「みどり荘事件」の記事における「DNA鑑定に関する批判」の解説
みどり荘事件は、裁判所の職権でDNA鑑定が実施された日本で最初の裁判となった。鑑定人である三澤教授らは、10年以上前の試料の分析方法としてDNA鑑定の中でも最先端といえたマイクロサテライトを用いたACTP2法を採用した。それまで日本ではACTP2法によるDNA鑑定が行われたことはなく、マイクロサテライトを用いたDNA鑑定自体が日本では初めてであった。 この鑑定は控訴審判決で信用性を否定されたが、弁護団などは、それ以前の問題として、こうした発展途上の技術を刑事鑑定に用いたことを批判している。すなわち、被告人の運命を左右する刑事鑑定においては、仮説と実験を繰り返す科学研究とは違って間違いは絶対に許されないのであるから、鑑定の基礎となる理論が専門家の間で広く承認されており、かつ、鑑定手段も技術的に確立されたものである必要があり、未成熟な先進的な技術を採用することは許されないとする批判である。この点について一橋大学の村井敏邦教授は、「刑事裁判は実験場ではない。むしろ、そのような実験場とはもっともほど遠いところにあるべきものであり、最も保守的な場であることにこそ意味があるとさえいえる」と述べている。弁護団は、三澤教授らの鑑定に対する姿勢を「科学研究と刑事鑑定の違いをわきまえないもの」「犯罪の成否を左右するという、鑑定人としての社会的責任を自覚してなかった」と批判している。 また、みどり荘事件では、弁護団が鑑定人に鑑定資料を提出させることで、鑑定の経過や手法を検証することができた。もしそうでなかったなら、DNA鑑定の結果をもって科学の名のもとに冤罪が継続する可能性があった。このことから、こうした先進的な科学技術を刑事裁判で採用する際には、鑑定結果を盲信するのではなく、具体的な鑑定経過の資料を開示させて、裁判に関わる法律家が信頼性を自ら判断できるようにすることが必要であると指摘されている。
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