D型肝炎ウイルスの構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 10:19 UTC 版)
「D型肝炎ウイルス」の記事における「D型肝炎ウイルスの構造」の解説
D型肝炎ウイルスのおおまかな形状は、約35 nmから37nmの球形をしていると説明される。 なお、文献によっては直径36 nmの球形の粒子だと説明されている場合もある。 このウイルスはエンベロープを持っている。 本来はB型肝炎ウイルス(ヘパドナウイルス)が表面に持っているタンパク質(HBs抗原)を、D型肝炎ウイルスのゲノムにはコードされていないのにもかかわらず、D型肝炎ウイルスは自身のエンベロープに持っている。 ただし、このエンベロープはHBs抗原だけでできているわけではなく、あくまでHBs抗原を構成材料として含んだエンベロープである。 なお、D型肝炎ウイルスの内部には、RNAから成っている自身のゲノムとδ抗原(デルタ抗原と片仮名表記されることもあり、また、D抗原、HD抗原とも呼ばれる)を持っている。 このうちδ抗原は、D型肝炎ウイルス粒子を界面活性剤で処理すれば(つまりエンベロープを壊せば)、表面に露出する。 D型肝炎ウイルスのゲノムは、1本のマイナス鎖の環状RNAである。 このRNAは約1.7 (kbase)、つまり、約1700個の塩基を持ったRNAである。 なお、塩基数は1678個であると記述している文献や、1683個であると記述している文献も存在する。 この1本鎖の環状のゲノムRNAは、分子内の相補性が高く、約70 %の塩基が塩基対を形成している。 いずれにしても、このゲノムにコードされているのはδ抗原と呼ばれるタンパク質のみである。 ただし、δ抗原にも長いもの(214個のアミノ酸からできているもので、分子量は約 27 kDa)と短いもの(195個のアミノ酸からできているもので、分子量は約24 kDa)とが存在しており、これらはウイルスのゲノムの異なる部位にコードされている。 このように別々の場所にコードされているのにもかかわらず、この2つのδ抗原を比較すると、長い方のδ抗原は、短い方のδ抗原と全く同じタンパク質のC末端に19個のアミノ酸が付加されただけの構造をしている。 1998年現在において、長い方のδ抗原はD型肝炎ウイルスのゲノムの複製を抑制する機能を持ち、逆に短い方のδ抗原は促進する機能を持っているのではないかと言われている。 この他に、このRNAはリボザイムとしての活性も持っており、自身のゲノムの複製時に、自分自身のゲノムの切断と結合を行うことも可能である。
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