8 深淵の中へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/02 01:18 UTC 版)
ドイル指令は即座に判断して、非常用酸素を使った。ロイが気絶した原因は、酸素不足のためだった。他の乗組員にも、眠くなったり頭がぼんやりした者がいたが、気絶したのはロイだけだった。この原因は、ひとつの酸素タンクが空になったときに、自動切換えバルブが作動しなかったこと。ともあれ操縦士が航行データを入力した連絡ロケットは、ゆっくりと宇宙病院を離れた。十分に離れてからメインエンジンに点火し、連絡ロケットはステーションに向けて航行を始めた。船内でドイル指令は、初めての水星探検隊に参加したときのことを話してくれた。半分は永遠の昼、反対側は永遠の夜(※これが書かれた時代には、水星は自転と公転が同期していると考えられていた)の天体。その境界の薄明地帯に着陸したこと。次に夜の地域に宇宙船を移動させて、探検を続けたこと。そこで信じられないことだが、生物を発見したこと。その生物を近くで観察するために寄ったとき、それが岩石を投げつけてきてドイル隊員の脚にあたったこと。そのため宇宙服の暖房回路が故障して、脚が凍りついてしまったこと。ドイル指令の両脚がなくなった理由を知って、一同はおし黙った。操縦士が時計を見て言った。「進路点検の時間を、10分過ぎている」。計器を見た彼は、身体をこわばらせ、キーボードを打った。再び計器をみると、ベルトを外して展望窓に飛びついた。窓の近くにいたロイも外を見た。病院を出発したときよりも、地球が小さくなっていた。
※この「8 深淵の中へ」の解説は、「宇宙島へ行く少年」の解説の一部です。
「8 深淵の中へ」を含む「宇宙島へ行く少年」の記事については、「宇宙島へ行く少年」の概要を参照ください。
- 8 深淵の中へのページへのリンク