2要素モデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 16:03 UTC 版)
「ウィンドケッセルモデル」の記事における「2要素モデル」の解説
最も単純な血行動態を表すモデルは2要素モデルであり、動脈コンプライアンスと全末梢血管抵抗の影響を考慮したものである。 右図の等価回路では、動脈コンプライアンスを電荷を蓄えるキャパシタの容量 C に、体循環の末梢血管抵抗を抵抗器の抵抗 R に対応させている。心臓から拍出される血液量は電流に対応し I(t) として、また大動脈の血圧は電位 P(t) としてそれぞれ時間の関数で表されている。 この時電流(心拍出量)、電位(大動脈圧)の関係は、以下の微分方程式として表される。 I ( t ) = P ( t ) R + C d P ( t ) d t {\displaystyle I(t)={\frac {P(t)}{R}}+C{\frac {dP(t)}{dt}}} 2要素モデルの解析の一例として、ここでは心室から大動脈に流出する血流を正弦波でシミュレートする。また単純化のために、等容収縮時間(英語版)と等容弛緩時間を無視する。即ち収縮期の開始と同時に大動脈弁の開放が起こり、大動脈弁の閉鎖と同時に拡張期に入ると仮定する。 振幅を I0、心周期時間を Tc、収縮期時間を Tsで表すと、収縮期の血流は I ( t ) = I 0 s i n ( π ⋅ t m o d T c T s ) {\displaystyle I(t)=I_{0}\ \mathrm {sin} \left(\pi \cdot {\frac {t\ \mathrm {mod} \ T_{c}}{T_{s}}}\right)} となる。ここで mod は mod演算子(mod operator)である。I0 と一回拍出量(Stroke Volume)は比例し、両者には S t r o k e V o l u m e = ∫ 0 T s I ( t ) d t = 2 I 0 T s π {\displaystyle Stroke\ Volume=\int _{0}^{T_{s}}I(t)\,dt={\frac {2I_{0}T_{s}}{\pi }}} の関係がある。また拡張期に拍出される血流は I ( t ) = 0 {\displaystyle I(t)=0} となる(ここでは大動脈弁閉鎖不全症などは無い理想的な状況を想定していることに注意)。 実際にこのモデルを解析的に解くと、まず 0 ≤ t ≤ Ts の収縮期では P ( t ) = c 1 e − t C R − I 0 T s R ( π C R c o s ( π t T s ) − T s s i n ( π t T s ) ) T s 2 + ( π C R ) 2 {\displaystyle P(t)=c_{1}e^{\frac {-t}{CR}}-{\frac {I_{0}T_{s}R\left(\pi CR\mathrm {cos} \left({\frac {\pi t}{T_{s}}}\right)-T_{s}\mathrm {sin} \left({\frac {\pi t}{T_{s}}}\right)\right)}{T_{s}^{2}+(\pi CR)^{2}}}} 但し定数 c1 は、収縮初期の血圧を Pssとして c 1 = P s s + I 0 T s R ( π C R ) T s 2 + ( π C R ) 2 {\displaystyle c_{1}=P_{ss}+{\frac {I_{0}T_{s}R(\pi CR)}{T_{s}^{2}+(\pi CR)^{2}}}} となる。一方 Ts ≤ t ≤ Tc の拡張期では、 P ( t ) R + C d P ( t ) d t = 0 {\displaystyle {\frac {P(t)}{R}}+C{\frac {dP(t)}{dt}}=0} となるので P ( t ) = c 2 e − t C R {\displaystyle P(t)=c_{2}e^{\frac {-t}{CR}}} 即ち指数関数的減衰曲線となり、これがウィンドケッセル効果により拡張期に末梢側に血流を送り出す血圧を表している。定数 c2 を求めるには拡張初期の血圧 Psd が必要であるが、Psd は収縮期における解から求められる収縮末期圧に依存する。この場合は等容弛緩時間を無視しているので、 P s d = P ( T s ) = P s s e − T s C R + I 0 T s R ( π C R ) T s 2 + ( π C R ) 2 ( e − T s R C + 1 ) {\displaystyle P_{sd}=P(T_{s})=P_{ss}e^{\frac {-T_{s}}{CR}}+{\frac {I_{0}T_{s}R(\pi CR)}{T_{s}^{2}+(\pi CR)^{2}}}\left(e^{\frac {-T_{s}}{RC}}+1\right)} として求められる Psd を用いて、 c 2 = P s d e T s C R = P s s + I 0 T s R ( π C R ) T s 2 + ( π C R ) 2 ( 1 + e T s C R ) {\displaystyle c_{2}=P_{sd}e^{\frac {T_{s}}{CR}}=P_{ss}+{\frac {I_{0}T_{s}R(\pi CR)}{T_{s}^{2}+(\pi CR)^{2}}}\left(1+e^{\frac {T_{s}}{CR}}\right)} となる。上記の結果から収縮期・拡張期いずれにおいても、一回拍出量に相関する I0 と動脈コンプライアンス C 、また末梢血管抵抗を表す R が動脈圧波形に関与することが分かる。
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