魔術師カエムワセトの物語
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「カエムワセト (ラムセス2世の息子)」の記事における「魔術師カエムワセトの物語」の解説
カエムワセトは死後1000年経ても人々に賢者として記憶されプトレマイオス朝時代以降二つの物語で主人公として登場する。これらの物語では彼は「サトニ・ハームス(Setne Khamwas)」という名前であり、これは「セム神官のカエムワセト(setem-priest Khaemwaset)」が変形したものと考えられている。また「セトナ・カエムワセト」と表記されているものもある。 現在カイロ博物館に収蔵されている物語はプトレマイオス朝時代にデモティックの書体でパピルスに書かれたもので「トートの書」を巡る物語である。トートによって書かれたその本には二つの呪文を収録されていることが語られる。その一つは天地、海と山、さらに地獄にまで魔法を用いることができ、もう一つは死して地下に収められても生きていた頃の地上での姿を保ち続けることが可能になるものだという。物語によれば、本は元々コプトスの近くのナイル川の底に隠されており、そこでは、蛇によって守られる一連の箱の中に保管されていた。エジプト人の王子ネフェルカプタハ (Neferkaptah) は蛇と戦い、本を取り出した。しかし、彼の盗みに対するトートからの処罰によって、神々が彼の妻と息子を殺害した。ネフェルカプタハは自殺し、本と一緒に埋葬された。幾世代後になって、物語の主人公カエムワセト(サトニ・ハームス)は、ネフェルカプタハの霊が抵抗するにもかかわらず、本をネフェルカプタハの墓から盗んだ。その後、カエムワセトは美しい女性に会ったが、彼女はカエムワセトに対し、彼の子供たちを殺害しファラオの前で自尊心を傷つけることをそそのかした。彼はこの出来事がネフェルカプタハによって考案された幻覚であったことに気付いた。そして、さらなる報復を恐れて、ネフェルカプタハの墓に本を戻した。それからカエムワセトは、ネフェルカプタハから、彼の妻と息子の身体を取り戻し、二人を彼の墓に置くよう頼まれ、カエムワセトがそれを成し遂げてこの物語は終わる。 もう一つの物語はローマ時代にデモティックの文字で書かれたもので現在大英博物館に収蔵されている。こちらはカエムワセトとその息子シ・オシリスの物語で、幼いころから不思議な力を持った賢明な子供シ・オシリスはその父であるカエムワセトを冥界に連れて行ったり、開封していない密書の内容を言い当て父を助ける。終盤にはシ・オシリスは自分の正体を明かし両親の前から姿を消すという物語である。 これらの話は必ずしも史実に基づいている訳ではないが数々の功績を残したカエムワセトが死後も人間界と神々の世界を繋ぐ賢者、あるいは魔術師として語り継がれてきたということを示している。
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