高城・高とは? わかりやすく解説

高城高

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/28 02:27 UTC 版)

(こうじょう こう、1935年1月17日-)は、日本の推理小説家。元新聞記者北海道札幌市在住。本名は(にゅうい よういち)。北海道函館市出身。

略歴

1935年、北海道函館市に生まれる。5歳の時に、英語教師だった父の転勤で宮城県仙台市に移住[1]第二次世界大戦中は父の故郷である秋田県北秋田郡比内町(現大館市の一部)に疎開。終戦後に仙台に戻り、進駐軍の兵士が古本屋に売ったペーパーバックや、英語教師だった父と交流があった米軍人から手に入れたハードボイルド小説を読み始めたという[2]

1955年、東北大学文学部英文科在学中、『宝石』の短編懸賞に「X橋附近[3]」を応募し、1位を受賞した。この小説は江戸川乱歩に絶賛され、現在では日本のハードボイルド小説の嚆矢とされる。大学卒業後の1957年に北海道新聞社に入社してからも、1970年まで短編を中心に作品を発表し続けたが、以降は沈黙していた[4]ため「幻の作家」と称された。

2006年に『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』が、荒蝦夷から地域限定(仙台市と北海道の書店)で発行され、2007年には『ミステリマガジン』や『ミステリーズ!』で作家活動を再開。2008年には、東京創元社から個人全集の刊行が始まり、約30年ぶりとなる新作『密漁船アークテック号 函館水上警察署復命控』を発表した。

作風

デビュー当初は5歳から大学卒業まで暮らした仙台市を舞台とするハードボイルド短編が中心だったが、大学卒業後は勤務先で故郷でもある北海道を舞台に、住民とソ連との緊張関係を描いたスパイ小説や、アイヌと道民の関係を題材とするハードボイルドが中心になった。また作家復帰第一作目は、明治時代の北海道を舞台にした歴史警察小説であるなど、ハードボイルド作家としてデビューしたが、それにとらわれない幅広い作風を持つ。

大学時代はフェンシングクラブに所属していたため、フェンシングに関連した作品も複数書いている(「賭ける」「函館水上警察」など)。

また小説以外では、アーネスト・ヘミングウェイをテーマにした大学の卒論や、アイヌ関連書籍がある。他にも仙台市内の書店で配布された冊子に、数本のエッセイを発表している。

著書

高城高名義

  • 微かなる弔鐘(光文社 1959年)
  • 墓標なき墓場(光風社 1962年)
  • X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選(荒蝦夷 2006年)※北海道と宮城の書店でのみ販売されたソフトカバー本。現在は絶版だが収録作品は「高城高全集」で読むことができる。
  • 高城高全集1~4(東京創元社創元推理文庫] 2008年)
  • X橋付近から(荒蝦夷 2008年)※エッセイ集。仙台市内の書店でのみ取り扱われ、現在は絶版。
  • 函館水上警察シリーズ
    • 函館水上警察(東京創元社 2009年 ISBN 4488024440)※ミステリーズ!に連載された『密漁船アークテック号 函館水上警察署復命控』から改題。
    • 函館水上警察 ウラジオストクから来た女(東京創元社 2010年10月29日 ISBN 978-4-488-02465-9
    • 冬に散る華(東京創元社 2013年4月26日 ISBN 978-4-488-47406-5)※上記を改題した文庫版。表紙イラストはゴトウヒロシ。
  • 夜明け遠き街よ(東京創元社 2012年8月11日 ISBN 978-4-488-02497-0
  • 夜より黒きもの(東京創元社 2015年5月15日 ISBN 978-4-488-02747-6
  • 眠りなき夜明け(寿郎社 2016年6月30日 ISBN 978-4-902269-88-8
  • 〈ミリオンカ〉の女 うらじおすとく花暦(寿郎社 2018年3月26日 ISBN 978-4-909281-07-4
  • 仕切られた女 ウラジオストク花暦(藤田印刷エクセレントブックス 2020年3月1日 ISBN 978-4-86538-106-1

乳井洋一名義

翻訳

脚注

  1. ^ 『X橋付近』著者略歴。
  2. ^ 『X橋付近』解説「原石の輝き」(池上冬樹)および著者あとがき「〈一期有限〉ということ」参照。
  3. ^ 『仙台ミステリー傑作選』(1987年 河出文庫)に収録以降は「X橋付近」の表記が用いられている。
  4. ^ 当時は作家を兼業することに対し、周囲の理解が得られなかったという。『X橋付近』著者あとがき参照。

関連項目

  • 宮城野橋(X橋) 仙台市内に実在する東北本線を越える陸橋で、大正時代から存在しており、歓楽街や赤線地域にも近かった。「X橋」の名前は橋の形状による地元での古くからの通称で、高城による仮称ではない。

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