鍵配送問題と公開鍵暗号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/13 21:18 UTC 版)
コンピュータの性能が向上するにつれ、暗号の安全性は、コンピュータをもってしても解読を防げる程度にまで達したが、暗号技術は別の壁にぶつかる。 共通鍵暗号で通信をするには予め鍵を相手に送っておかなければならないが、その鍵を暗号化せずにそのまま送信すれば第三者に盗まれてしまう。安全に鍵を配送するのは多額のコストがかかり、これが鍵配送問題と呼ばれる問題である。鍵配送問題の例として、敵国に侵入したスパイに暗号鍵を送信していると推測される放送もある(ナンバーステーション、乱数放送)。 鍵配送問題を解決すべく、1976年にホイットフィールド・ディフィDiffieとマーチン・ヘルマンHellmanが公開鍵暗号系の概念を提案する(Diffie-Hellman鍵共有)。これは共通鍵暗号系と違い、暗号化と復号に別の鍵を使う、というアイデアである。暗号化の鍵は誰でも入手できるように公開してもよく、送信者はその公開鍵で暗号化して送信し、受信者は復号鍵で平文に戻す。公開された暗号化鍵では復号できず、復号鍵は受信者しか知らないので、通信の秘密は保たれる。 具体的な公開鍵暗号方式として有名なRSA暗号はその翌年に発表された。その後、ラルフ・マークルMerkleとヘルマンの二人が公開鍵暗号方式であるMerkle-Hellmanナップサック暗号を提案したが、この暗号方式は後に解読されてしまった。暗号ソフトウェアはフリーウェアとして公開されているPGPなどもあり、誰でも安心して通信できるようになった。 現在ではもっぱらソーシャルエンジニアリングによる鍵や情報の流出の危険性のほうが問題となっている。コンピュータのパスワードを複雑なものにする、パスワードのメモを机やゴミ箱に放置しないなどの対策が必要となる。
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