還元主義的解釈への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 02:19 UTC 版)
脳内現象説への根本的な批判として、そもそも脳内現象説は「脳内物質の発生により体験が起こっている」という「因果関係」を明らかにしているとは言えず、体験と脳内物質との「対応関係」(相関関係)を説明しているだけなので、「体験は脳内物質の分泌によるものにすぎない」と還元主義的に捉えるべきではないという批判がある。 詳細は「相関関係と因果関係」および「意識に相関した脳活動」を参照 また、仮に側頭葉への電気刺激が体外離脱現象を起こしたとしても、それは異なる経路により同じ現象が起きただけであり、どうやって意識不明者が外界の物事を知覚し得たのかという問題はそのまま残る事になる。すると「側頭葉に刺激が起きた事が引き金要因となり、何らかの認識主体(霊魂など)が身体を離れ外界を知覚した」と説明する余地も残る事になる(そうした解釈は実際に唱えられており、右側頭葉は脳と精神と魂の収束する場所であると考える者もいる)。この例において側頭葉への刺激で体外離脱が起きたという事自体は、側頭葉と体外離脱に何らかの「関連性」がある事を示しただけである事に注意する必要がある。 初期の研究者の中には、臨死体験が幻想でない事を示すために、脳機能との関連性を見出そうとした者もいた。また、ペンシルバニア大学のアンドリュー・ニューバーグ(英語版)は、深い瞑想状態に入った人の脳内に一定の神経学的な変化が現れる事を見出したが、「瞑想時における様々な神秘体験が客観的な現実であるか」と問われた時に、「それは『神経学的な現実』である」と返している。神経科医のヴィラヤヌル・S・ラマチャンドランは「脳のなかの幽霊」で、側頭葉が神秘体験に関係しているという証拠は「使いようによっては神の存在に対する反証ではなく、神の存在を支持する証拠にもなる」とも語っている。 こうした例からもわかる通り、ある体験に関与する脳の領域や化学物質を同定する事と、その体験が幻想である事を証明する事とはイコールではないので、混同してはならない。体験の幻想性を決定づけるのは、神経学的要因ではなく社会的な要因である。
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