過去改変の試みは織り込み済み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/16 20:11 UTC 版)
「親殺しのパラドックス」の記事における「過去改変の試みは織り込み済み」の解説
藤子・F・不二雄の「ドラえもん」には、「現在は過去を改変しようとする未来からの干渉を織り込んだ上で成り立っている」とする話がある。てんとう虫コミックス37巻「のび太の0点脱出大作戦」では、のび太がテストでいい点を取るために出木杉の答案を見ようとテストが返却された後の未来へタイムマシンで移動するが、そこにはのび太本人が待っていて、「他人の答案を見て百点とろうなんてせこいこと考えるなよ。実力でいこうよ」と言って、答案を見に来たのび太を撃退してしまう(この時点ではドラえもんにものび太にもなぜ出木杉の部屋にのび太がもう一人いたのかまったく不明)。のび太は仕方なく自力で勉強を始め、それなりの点を取って周囲から褒められる。自力での成果に気をよくしたのび太は、翌日に出木杉の部屋に過去の自分が答案を見に来ることを思い出し、過去の自分を撃退するためにドラえもんにひみつ道具を借りて出木杉の部屋へタイムマシンで向かう。この話では、のび太が過去の改変に成功したようではあるが、のび太は「出木杉の答案を見た現在」を変えるために過去に行ったわけではない。 また32巻「連想式推理虫メガネ」では、金貨が密室から消えたという事件を解決するためにドラえもんとのび太がタイムマシンで金貨がなくなった時間帯の密室に張り込むが、犯人はついに現れずドラえもんは金貨を持ち出して現在に戻り持ち主に返そうとする。つまり「ドラえもんが過去にさかのぼって金貨を持ち出したから金貨が消えた」というオチなのだが、オチが描かれるまでの間は完全に「謎の金貨消失」としてストーリーが展開している。 谷川流の小説、「涼宮ハルヒシリーズ」では、1巻よりも未来の主人公、キョンによってもたらされた過去への干渉によって現在が成り立ち、現在のハルヒやSOS団との活躍が描かれる。作中、「過去に干渉して未来を変えることはできない」と語られているが、「干渉できず、変わらない」という意味ではなく、干渉した結果が未来の姿である。作中では「規定事項」と呼ばれており、未来人は自由に渡航することはできない。 ロバート・A・ハインラインの短編小説、「時の門」では、主人公のボブはジョンと名乗る謎の男性に勧誘され未来に行く。未来に着いたボブは、そこでディクトールと名乗る老人に過去に行ってある男性を説得してきて欲しいと頼まれる。ボブが過去に行くとそこは彼自身の部屋で過去のボブがおり、過去の自分自身と出会ってしまった彼はとっさにジョンと名乗った。未来から来たボブは途中で顔にケガをしており、過去のボブは酒に酔っていた。そして未来の自分が自分に会いに来たなどとつゆほども想像していなかったため気づかなかったのである。未来から来たボブは全く同じ出来事を2つの視点から経験していることに気づいた。彼はこの時なんでもいいから過去と異なる行動や言動をすればこの堂々巡りの連鎖から逃れられるはずだと思いかけるが結局行動にも口にも出さず、かつてのジョンと全く同じようにボブを未来へ勧誘した。その後も彼は何度かタイムトラベルを繰り返し、そしてディクトールもまた年老いたボブ自身であったことが明らかになる。 このように矛盾が起こらない一貫性のある物語では自由意志が働かないという考え方もあり、それらが焦点になる作品もある。
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