連邦裁判所と州裁判所の関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 03:50 UTC 版)
「アメリカ法」の記事における「連邦裁判所と州裁判所の関係」の解説
連邦裁判所と州裁判所は、それぞれ独立した関係にあり、上下の関係にあるものではない。 州裁判所の事物管轄は、広く連邦裁判所の排他的な専属管轄に属しない事件に及ぶが、連邦裁判所の第一審として専属管轄を認めるのは、特許に関する事件や倒産に関する事件などさほど多くはないので、連邦裁判所と州裁判所の管轄は競合することもある。このような場合、いずれの裁判所に訴訟を提起するかは、原告が判断することになる。 原告が州裁判所に訴訟を提起することを選択した場合、移送が認められる場合を除き、州最高裁判所の終局判決が最終的な判断となる。州最高裁判所の判決に不服のある当事者は、連邦最高裁判所に上訴ができるが、この場合、当事者の権利として上訴できるのではなく、連邦最高裁判所が裁量によって上訴を許可することとなっており、許可事由も州法が合衆国憲法または連邦法に違反していることが争点となっているときなどに限定されている。 原告が連邦裁判所に訴訟を提起することを選択した場合は、若干複雑である。合衆国では、大陸法系のような民法に対応する形での民事訴訟「法」、刑法に対応する形での刑事訴訟「法」というものはなく、裁判所組織および裁判手続に関する法律の中で、民事編と刑事編の規定が分けられており、法(Law)と手続(Procedure)は区別されている。したがって、連邦裁判所での裁判手続(Procedure)については、連邦法および連邦裁判所施行規則に従うが、実体法(Law)については、その管轄する地方の州法ないしコモン・ローに従うものとされている。1938年のイーリー鉄道会社対トンプキンズ事件判決以来現在に至るまで、連邦裁判所による、州を超えた合衆国全体についてのコモン・ローの形成は認められていない。 いずれにせよ、契約、不法行為、家族、相続、刑事事件など日常の大部分の事件は州裁判所で取り扱われ、または連邦裁判所で取り扱われる場合にも州法ないしその州のコモン・ローに従って解決されている。今まで述べてきた連邦の権限の拡大・強化にもかかわらず、各州は強大な権限を現在でも維持し、合衆国国民にとって単に裁判所といえば、自分が住んでいる行政地区にある身近な州裁判所のことを指すのである。
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