資本主義萌芽論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 14:46 UTC 版)
日本統治時代に様々な近代化が行われたことを認めつつも、資本主義の萌芽は李氏朝鮮の時代に既に存在しており、日本による統治はそれらの萌芽を破壊することで、結果的には近代化を阻害したとする資本主義萌芽論が、1950年代に北朝鮮で唱えられた。これはのち1960年代から1970年代に日本に紹介され、1980年代には韓国へ日本を経由して伝わった。しかし、その後の実証的研究の進展により、韓国においても、資本主義萌芽論について否定的な見解が優勢になっている。 近年、李栄薫らは李氏朝鮮時代の資料を調査し、李氏朝鮮時代の末期に朝鮮経済が急速に崩壊したことを主張し、資本主義萌芽論を強く否定しており、「幻想」と評している。また、ハーバード大学のカーター・J・エッカートは、資本主義萌芽論を「論理ではなく日本国を弾劾することが目的」「韓国人が彼らの歴史の中で、産業革命の種子(資本主義萌芽)を捜そうと努力することは、オレンジの木からリンゴを求めるようなものだ」とし、韓国の資本主義は日本の植民地化の中で生まれ、戦後の韓国の資本主義や工業化も、日本の近代化政策を模したものであるとした。またエッカートは、日本による統治そのものについて朴正煕政権との類似性などを挙げ、軍事政権の一形態であり、韓国の資本家に独裁政権への依存体質をもたらす原因になったとも述べている。 これに対しカリフォルニア大学のステファン・ハガードは、エッカートの議論は具体例に欠しいと批判した。しかしハガードの研究においても、戦後の韓国の経済成長は日本統治期から引き継いだ金融システムと権威主義的国家構造による効率的な外資利用によるものだとしており、韓国の内在的発展性の重要性を弱めていると主張する韓国人もいる。
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