賃料額改定の特則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 16:46 UTC 版)
賃料額の改定に際しては賃貸人と賃借人の地位の違いとそれによる交渉力の差が大きく現れる局面である。よって借地借家法は地代や家賃が経済事情の変化によって現状に見合わない額となった場合(高すぎるという場合も低すぎるという場合もある)には、当事者の双方が借賃増減額請求権を取得する(借地は11条、借家は32条)。これを行使すると、その意思表示が相手方に到達した日から変更額の効果が生じる(最判昭45.6.4)。つまり借賃増減額請求権は形成権である。もちろん具体的な額は裁判などによって決定されることになるが、請求権を行使した時点から賃料が変更されたものとして扱われる。こうすることで紛争解決を引き延ばし、引き延ばしている期間の賃料を現状の額で据え置こうとする戦術は無意味化する。 例えば20万円の家賃が諸般の事情を考慮した場合に異常な高値であったとする。そこで借家人が1月に「賃料を10万円にせよ」という内容の借賃増減額請求権を行使した。家主はその額について難色を示したため裁判となり、結果7月に「賃料を15万円とする」という決定が出たとする。すると賃料は1月の時点から15万円であったとして扱われ、賃借人は1月以降の賃料を15万円で支払うことになる(7月から賃料が15万円になるわけではない)。 具体的には、「土地・建物に対する租税その他の負担の増減」または「土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の動向」または「近隣の同種の借地・借家の借賃と比較」によりそれら借賃が不相当となった場合、かつ当事者間に一定期間借賃を「増額しない」旨の特約がない場合(「減額しない」旨の特約は借主に不利であるため無効である)に、当事者は借賃の増減額の請求ができる。 増額請求の場合(賃貸人から賃借人に対する請求)、請求を受けた賃借人は裁判確定までの間、自己が相当と認める額(従来の借賃より高い額でなければならない)を支払えば債務不履行にならない。裁判で確定した額が、自己が相当と認めた額より高かった場合、賃借人は不足分を支払期限後年一割の利息とともに賃貸人に支払わなければならない。 減額請求の場合(賃借人から賃貸人に対する請求)、請求を受けた賃貸人は裁判確定までの間、自己が相当と認める額(従来の借賃より低い額でなければならない)を請求することができる。裁判で確定した額が、自己が相当と認める額より低かった場合、賃貸人は超過分を受領時後年一割の利息とともに賃借人に支払わなければならない。 地代自動改定特約がある場合でも、その改定基準を定めるにあたって基礎となっていた事情が失われることにより、同特約によって地代等の額を定めることが不相応なものとなった場合には、増減額請求権の行使を特約によって妨げられるものではない(最判平15.6.12)。 なおこうした賃料額の決定を巡る訴えを提起する場合には、 あらかじめ調停を申立てなければならない(調停前置主義、民事調停法24条の2、24条の3)。
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