負のダイラタンシー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/24 02:34 UTC 版)
「ダイラタンシー」の記事における「負のダイラタンシー」の解説
ゆるく堆積した砂層などは、逆に振動を受けて体積が減少することがある。これを負のダイラタンシーという。負のダイラタンシーにより粒子間に含まれている液体が余分になり、これが潤滑剤の作用をして強度が著しく減る。軟弱地盤の砂層が地震の時液状化して、地表が陥没したり、建物が傾いたりして大きな被害が生じることもある。雪崩や地震などの現象にも負のダイラタンシーが関係している。(※→チキソトロピーも参照) ダイラタンシーの作用で液体を吸いこんで固化したものも、外力を除けば再び流動性を回復する。沈澱反応でつくった微細紛末を濾そうとして減圧にすると、液が表面から消えるが下へは出てこない。減圧をやめると再び表面に惨み出てくる。こうしていつまでも引けないことがある。ジャガイモ澱粉(片栗粉)を少量の水でペーストにする。これは静かに流れる高粘性流体であるが、手で強く掴むと瞬峙に表面の水が吸いこまれてもろい固体となって割れる。破片は机上に落ちて再び流れてひろがる。 例えば、おなじ大きさの球形粒子の水を吸った状態を考える。立体幾何学的な計算によると最密充填(六方晶系充填)では空隙率は25.95%である。この空隙を埋めるに足る水があれば系は静かに流れることができる。ところが急激な強い外力が加えられると粒子が粗な充填位置に移動し、最粗充填すなわち等軸晶系充填になると空隙率は47.64%になる。ゆえに水は全部内部へ吸いこまれてまだ足りず、水分のない状態でこすり合う粒子ができる。表面の水が中へ吸いこまれ、体積が幾分膨張し、流動性が失われてもろい固体となるのはこのためである。 粉粒体と言うより懸濁液という方が近い状態でも、ダイラタンシーの影響で普通の液体とは違う現象が起きる。そこで「粘度がせん断速度増大によって上昇する現象をダイラタンシーという」という定義がFreundlichにより、レオロジーの立場から定義を拡張して使われるようになった。 ダイラタンシー(せん断濃密化とも)材料、ダイラタンシー液体という言葉がずりひずみ速度が大きくなると粘度が上昇するものに対して使われることもある。Shear thickening fluid (STF)という言い方もある。
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