議論過程と知識の根拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 15:52 UTC 版)
議論学は基礎づけ主義にその起源をもつ。基礎づけ主義は哲学の認識論の理論である。そこでは認識の普遍的な体系の形式(論理)と資料(事実に基づいた法)の中で主張の根拠を探すことが試みられる。しかし議論の研究者はアリストテレスの系統だった哲学や、プラトンやカントの観念論を否定した。彼らは、主張の前提は形式哲学的体系にその健全性を依存するという考えに疑問を投げかけ、最終的には放棄した。こうしてこの分野は広がった。 「クォータリー・ジャーナル・オブ・スピーチ第44号」(1963年)に掲載されたカール・R・ウォレスの影響力のあるエッセイ「実体と修辞:よい根拠」によって多くの学者が「市場の議論」―普通の人々が行う普通の議論―の研究を行うようになった。市場の議論学に影響力のあるエッセイとしては他にレイ・リン・アンダーソンとC・デイヴィッド・モーテンセンの「論理学と市場の議論学」(クォータリー・ジャーナル・オブ・スピーチ第53号、1967年、p143~p150)があり、この潮流によって後に知識社会学の発展との提携が自然に起きた。哲学、特にジョン・デューイやリチャード・ローティといったプラグマティズムの近年の発展との提携を引き起こす学者もいる。ローティはこの転換を強調して「言語論的転回」と呼んだ。 議論学のこういった新しい混成的な取り組みは倫理的、科学的、認識論的問題や科学だけが答えられる自然の問題に関して、結論を確かなものにするための経験的な根拠をもって使われる場合もあれば根拠なく利用される場合もある。プラグマティズムやその他多くの人文・社会科学の発展をよそに、「非哲学的」議論学が独自の知的領域に主張の形式的根拠や物質的根拠を据えて発展してきた。その独自の知的領域としては非形式論理学や社会心理学がある。こういった新しい分野は非論理的であったり反論理的であったりするわけではない。それらは大多数の人の集団の発話になにがしかの首尾一貫性を見出す。ゆえにこういった理論は、社会的な知識の基盤に焦点を当てている点でしばしば「社会学的」だと言われる。
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