課税前か課税後か
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/07 19:21 UTC 版)
「IRA (アメリカ)」の記事における「課税前か課税後か」の解説
通常IRAは課税前所得から拠出してその拠出額と運用益は実際の引き出しまで課税が繰り延べられるのに対して、Roth IRAは課税後所得から拠出してその運用益は非課税である。どちらの方法が最終的に得か損かは、以下のような様々な要素があり単純には決定できない。 拠出時および引出し時の税率とその累進構造 運用益 運用益以外の課税収入 退職後の引出し額パターン 物価上昇 今ここで年収5万ドルの人がその10%をIRAに拠出し続けた場合の20年後を考える。単純化のために以下の条件とする。 物価変動・所得変動・税率変動なし 一律20%の税率(累進なし)、IRA以外の控除なし 20年後に運用の結果、拠出元金と運用益合計が拠出金額の2倍になったとすると 通常IRA所得税の課税対象は5万ドルから10%の拠出を引いた残りの4万5,000ドル 消費に回せる毎年の純手取り額は4万5,00ドルから20%の税控除後の3万6,000ドル 運用後IRA残高は年間拠出額5,000ドル(税控除前の10%)×20年×2倍=20万ドル IRAからの引出し手取り額は20%の所得税を控除して16万ドル Roth IRA所得税の課税対象は5万ドル全額 消費に回せる純手取り額は5万ドルから20%の税控除後の4万ドルから10%の拠出を差し引いた3万6,000ドル 運用後IRA残高は年間拠出額4,000ドル(20%税控除後の10%)×20年×2倍=16万ドル IRAからの引出し手取り額は非課税なので16万ドル全額 となり、結果的にどちらの方法でも納税が早いか遅いかの違いだけで、消費にまわせる金額と引出し手取り金額は同一になる。もちろん、前述のように物価、所得、税率など予測不可能な時間的に変動する要素や累進課税があるので、実際には20年後に結果を比べるまで分からないが、一般に下記のように言われている。 退職資金引き出し時の実効税率が現在の税率より高いと予想(例: 現在は就職したばかりの低所得の若年)なら課税後拠出が有利 退職資金引き出し時の実効税率が現在の税率より低いと予想(例: 現在は比較的高所得の壮年で退職後は子の教育資金や住宅ローンが不要なので必要生活資金額が現役時代に比べて減る)なら課税前拠出が有利 ただし、アメリカ合衆国連邦所得税率の歴史的推移を見ると、累進税率の最高税率%/最低税率%は、88/19(1943年)、91/20(1963年)、50/0(1983年)、35/10(2003年)、40/10(2013年)と、時の経済状勢と政権の政策により大幅に変動しており、退職まで10年単位の時間のある現在の勤労者が将来の所得税率を正確に予測することは事実上不可能である。 また、貯めた退職資金を自分のために使わず、死後に相続人に渡すことを優先するなら、引出しに課税されない課税後拠出(Roth IRA)が有利である。
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