訣別の電文
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 01:03 UTC 版)
戦局最後ノ関頭ニ直面セリ 敵来攻以来 麾下将兵ノ敢闘ハ真ニ鬼神ヲ哭シムルモノアリ 特ニ想像ヲ越エタル量的優勢ヲ以テスル陸海空ヨリノ攻撃ニ対シ 宛然徒手空拳ヲ以テ 克ク健闘ヲ続ケタルハ 小職自ラ聊(いささ)カ悦ビトスル所ナリ 然レドモ 飽クナキ敵ノ猛攻ニ相次デ斃レ 為ニ御期待ニ反シ 此ノ要地ヲ敵手ニ委ヌル外ナキニ至リシハ 小職ノ誠ニ恐懼ニ堪ヘザル所ニシテ幾重ニモ御詫申上グ 今ヤ弾丸尽キ水涸レ 全員反撃シ 最後ノ敢闘ヲ行ハントスルニ方(あた)リ 熟々(つらつら)皇恩ヲ思ヒ 粉骨砕身モ亦悔イズ 特ニ本島ヲ奪還セザル限リ 皇土永遠ニ安カラザルニ思ヒ至リ 縦ヒ魂魄トナルモ 誓ツテ皇軍ノ捲土重来ノ魁タランコトヲ期ス 茲(ここ)ニ最後ノ関頭ニ立チ 重ネテ衷情ヲ披瀝スルト共ニ 只管(ひたすら)皇国ノ必勝ト安泰トヲ祈念シツツ 永ヘニ御別レ申シ上グ 尚父島母島等ニ就テハ 同地麾下将兵 如何ナル敵ノ攻撃ヲモ 断固破摧シ得ルヲ確信スルモ 何卒宜シク申上グ終リニ左記〔注:原文は縦書き〕駄作御笑覧ニ供ス 何卒玉斧ヲ乞フ 国の為 重き努を 果し得で 矢弾尽き果て 散るぞ悲しき 仇討たで 野辺には朽ちじ 吾は又 七度生れて 矛を執らむぞ 醜草(しこぐさ)の 島に蔓る 其の時の 皇国の行手 一途に思う 太字は大本営により添削された箇所 (新聞に掲載された電文)戦局遂に最後の関頭に直面せり 十七日夜半を期し小官自ら陣頭に立ち、皇国の必勝と安泰とを祈念しつ、全員壮烈なる総攻撃を敢行す 敵来攻以来想像に余る物量的優勢を以て陸海空よりする敵の攻撃に対し克く健闘を続けた事は小職の聊か自ら悦びとする所にして部下将兵の勇戦は真に鬼神をも哭かしむるものあり 然れども執拗なる敵の猛攻に将兵相次いで斃れ為に御期待に反し、この要地を敵手に委ねるのやむなきに至れるは誠に恐懼に堪へず、幾重にも御詫び申し上ぐ 特に本島を奪還せざる限り皇土永遠に安からざるを思ひ、たとひ魂魄となるも誓つて皇軍の捲土重来の魁たらんことを期す、今や弾尽き水涸れ戦い残れる者全員いよく最後の敢闘を行はんとするに方り熟々皇恩の忝さを思ひ粉骨砕身亦悔ゆる所にあらず 茲に将兵一同と共に謹んで聖寿の万歳を奉唱しつつ永へ御別れ申上ぐ 終りに左記駄作、御笑覧に供す。 国の為重きつとめを果たし得で 矢弾尽き果て散るぞ口惜し 仇討たで 野辺には朽ちじ 吾は又 七度生れて 矛を執らむぞ 醜草(しこぐさ)の 島に蔓る 其の時の 皇国の行手 一途に思ふ 大本営発表により、新聞に掲載された原文のまま。下線は大本営により、新たに加筆された所
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