解釈と重要さ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 02:29 UTC 版)
特に、境界を持たないコンパクトな曲面に対して定理を適用すると、積分 ∫ ∂ M k g d s {\displaystyle \int _{\partial M}k_{g}\;ds} の部分は省略することができる。このことは、閉曲面の全ガウス曲率は曲面のオイラー標数の 2π 倍に等しいことを意味している。境界を持たない向き付け可能なコンパクト曲面に対し、 g {\displaystyle g} を曲面の種数とするとオイラー標数は 2 − 2 g {\displaystyle 2-2g} であることに注意する。境界をもたない向き付け可能なコンパクトな曲面は、トポロジー的には g {\displaystyle g} 個のハンドル体をつけた球面に同相となる。 曲面 M {\displaystyle M} を折り曲げたり変形させたりすると、位相不変量であるオイラー標数は変わらない一方で、幾つかの点の曲率は変わる。いくらか驚くかもしれないが、本定理は、どのように変形されようとも、すべての曲率の全積分は変化しないと主張する。例えば、球にくぼみを作っても、くぼみの大きさや深さには関係なく、球の全曲率は 4π である(オイラー標数が 2 であるので)。 曲面のコンパクト性は極めて重要である。例として、境界のない非コンパクトなリーマン面である曲率が 0 でオイラー標数が 1 の単位開円板を考えてみると、ガウス・ボネの定理はうまく機能しない。しかし、定理は同じくオイラー標数が 1 のコンパクトな単位閉円板に対しては正しい。境界での積分の値が 2π だからである。 応用として、オイラー標数が 0 であるトーラスを考えると、トーラスの全曲率は 0 であるはずである。R3 に埋め込まれているトーラスは通常のリーマン計量を持っているので、内側は負のガウス曲率をもち、外側は正のガウス曲率をもっており、全曲率は実際に 0 である。トーラスを四方形の反対の辺を同一視することでも構成することができ、その場合にはトーラス上のリーマン計量は平坦であるので、全曲率の結果は再び 0 となる。トーラス上では、ガウス曲率がどこでも正であったりどこでも負であったりするようなリーマン計量は不可能である。 定理は三角形に対しても興味深い結果を与える。M を 2 次元リーマン多様体(必ずしもコンパクトである必要はない)とし、3つの測地線から構成される M 上の「三角形」を考えると、三角形の内側と三角形自身が与える線分より構成される面 T に、ガウス・ボネの定理を適用できる。すると、測地線曲率は 0 であり、T のオイラー標数は 1 であるので、測地線三角形の頂点で回転する角度の和は、2π から三角形の内側の全曲率を引いた値となることを言っている。頂点で回る角度は π から内角を引いた値に等しいので、このことを言い換えると次のようになる。 測地線三角形の内角の和は、π に、三角形により囲まれた部分の全曲率を足した値となる。 平面の場合(ガウス曲率は 0 で測地線は直線である)は、通常の三角形の内角の和を再現する。標準球面上では、曲率はどこでも 1 であり、測地線三角形の内角の和は常に π よりも大きいことがわかる。
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