要素粒子の指定が必要な場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/28 22:13 UTC 版)
「物質量」の記事における「要素粒子の指定が必要な場合」の解説
物質の名称だけでは物質量が曖昧となる場合を、以下に例示する。 分子名と原子名が同じ物質 「酸素の物質量」という言い方では n(O2) と n(O) のどちらを指すか分からない。 0 ℃、1013 hPa で 22.4 L の酸素ガスには、酸素分子であれば 1.00 mol が、酸素原子であれば 2.00 mol 含まれる。「窒素の物質量」や「塩素の物質量」も同様である。それに対して「オゾンの物質量」は n(O3) を、「アルゴンの物質量」は n(Ar) を指すので曖昧さはない(オゾン原子やアルゴン分子が存在しないため)。 分子中の一部に注目する場合 二塩基酸である硫酸が水酸化ナトリウムと中和して硫酸ナトリウムと水を生成する場合には、硫酸分子の2個の水素がそれぞれ中和反応により1分子の水を生成するので、1 mol の硫酸は水素イオンの物質量としては 2 mol となる。 高分子化合物 モノマーユニットの繰り返しからなる高分子化合物では、モノマーユニットを要素粒子とした物質量と高分子の分子自体を要素粒子とした物質量が、目的に応じて使い分けられる。 分子性物質であることが無視されがちな物質 先に述べたように、一種類の分子のみを含む純物質では分子が要素粒子とされていることが多い。ただし、硫黄や酸化リン(V)、酢酸銅(II)一水和物のように例外も多い。このような場合は、分子式 S8、P4O10、Cu2(CH3COO)4•2H2O か組成式 S、P2O5、Cu(CH3COO)2•H2O のどちらかを示して要素粒子を明示する。 不定比化合物 不定比化合物の組成式は、物質名からは分からない。このような場合は組成式を明示して、それを要素粒子とする。例えば硫化鉄(II) Fe0.91S であれば、この物質の要素粒子を Fe0.91S とする。 要素粒子は、都合のよいように選ぶことができ、物理的に実在する個々の粒子である必要はない。例えば、鉄:硫黄の質量比が Fe : S = 61.3 : 38.7 である硫化鉄の要素粒子を Fe0.91S とすることができる。あるいは、(1/5)KMnO4 のような要素粒子は、そのような要素粒子は存在しないという意味で人為的なものであるが、酸性条件下の酸化還元滴定では、これを1個の電子を受け取る要素粒子と考えることができる。 要素粒子を都合のよいように選ぶことができる、とはいうものの、pV = nRT のような式や束一的性質を含む式では、n の定義で考えられる要素粒子は、独立に並進運動する粒子とすべきである。例えば、乾燥空気は、窒素分子、酸素分子、アルゴン原子などからなる混合気体である。SIの定義では、要素粒子は必ずしも同等の粒子とは限らないので、乾燥空気 1mol という表現も許される。乾燥空気の要素粒子は独立に並進運動する粒子であり、その状態方程式に現れる物質量 n は、独立に並進運動する粒子数をアボガドロ定数で割ったもの、すなわち窒素分子の数 + 酸素分子の数 + アルゴン原子の数 + 二酸化炭素分子の数 + … をアボガドロ定数で割ったものである。
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