自然作用による崖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/10 06:07 UTC 版)
自然の流水・雨水・海水・風・氷河などといった太陽エネルギーに基づく外作用が地形形成営力(土地に働きかけて地形を変化させる力)として作用することを侵食/侵蝕というが、地表の岩石や土壌が侵蝕されることで、そこに崖が形成される。 海水の運動(波浪・潮流・海流など)による海岸とその付近の浅海底に対する侵食を海岸侵食といい、略して海食というが、海食によって生まれる崖を海食崖/海蝕崖(かいしょくがい)といい、略して海崖ともいう。また、波浪による侵食を波食/波蝕というが、波食によって生まれる崖を波食崖/波蝕崖(はしょくがい)という。アメリカ海洋大気庁のESIマップでは海岸性状の分類を設けており、崖になっている海岸線は、Exposed rocky shore(硬い地質の傾斜30度以上の海食崖など)ほか数種類に分類される。 崖はその急峻な地形ゆえに棲息環境としても生物種を選ぶ。特に脊椎動物は、断崖に適応進化した場合、捕食圧(捕食される淘汰圧)から大きく逃れることが可能となる。飛翔することで断崖を自在に利用できる鳥類は、その利点を存分に活かして崖を繁栄の場としている一大勢力といえる。鳥による崖の利用は、逃れることに限らず、多くの猛禽類がそうであるように、そこから獲物を狙うことにも利用される。また、崖があることで生じる上昇気流を、鳥は大いに利用する。高層ビルの立ち並ぶ大都会にハヤブサやオオタカが進出していることは、断崖の高さや上昇気流を利用してきた彼らの習性が、高層ビルでも有効であったことを意味する。地上棲の哺乳類の場合は、断崖に高度に適応することは生存上の極めて大きな利点となり、固有種を形成することが多い。なぜなら、中型・大型の哺乳類にとって最も警戒すべき捕食者は中型・大型哺乳類であり、彼らが能力的に入り込めないレベルの厳しい断崖に適応することは、その種からの捕食圧に対する絶対的安全地帯の確保を意味するからである。例えば、断崖にある程度適応した大型ネコ科動物(ユキヒョウなど)はいるが、より高度な適応を見せる偶蹄類の複数グループ(アイベックスなど)は、ネコ科には叶わず彼らのみが入り込めるレベルの断崖を生存上の牙城としている。切り立った崖を平地と変わらない高速で疾走できるのも彼らのみで、ネコ科の適応種はこれを追うことができない(彼らも走れるが、追いついて捕獲できるレベルではない)。垂直の絶壁さえ巧みによじ登って上層の台地を天空の楽園のように利用するサルの一種(ゲラダヒヒなど)もいる。これら高度な適応種にとって、そのような場所にいる時、幼獣などを狙ってくる警戒すべき天敵は空にしかいないことになる。
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