膜電位の測定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 17:05 UTC 版)
詳細は「電気生理学」を参照 膜電位を電気的に測定するためには、細胞内外にそれぞれ一本ずつ電極をおくことが必要となる。細胞外は良いとして、細胞内に電極を刺すことはなかなか困難である。これを最初に可能にし、膜電位を測定したのがイギリスの神経科学者、アラン・ホジキンとアンドリュー・ハクスレーということになっている(後述)。彼らはイカの巨大軸索を用いて、膜電位とその変化を観察した功績から、1963年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。イカの巨大軸索は直径1mm近くあるので、内部に金属製のワイヤを差し込むことが比較的容易だったためである。 しかし、今日では細胞内にワイヤを刺すことはまず行われず、電解液で満たした細いガラス管電極を細胞にあてて、膜電位を測定するのが主流である。細胞内に直接電極が刺さっていなくても、測定電極と電解質溶液が連続している限り、なんら問題はなく膜電位は測定できるからである。この技術はパッチクランプ法と呼ばれ、神経科学研究の大切な技術の一つである。また、これ自体1991年のノーベル生理学・医学賞受賞技術である。 しかし、ホジキン(1955)やハクスレー(1951)に先行すること10年以上前、日本人の科学者、鎌田武雄が英国留学中にゾウリムシの膜電位の測定に成功していた(1934)。しかも彼はこの時点ですでにガラス管電極を発明して用いており、ノーベル賞級の技術を二つ同時に駆使していたことになる。 今日でも、パッチクランプ法は主要な膜電位の測定技術であるが、1970年代から、細胞膜に溶け込み、膜電位の変化に応じて蛍光あるいは吸光が変化する、膜電位感受性色素と言う化学物質が発明され、光学的に膜電位変化を計測する方法(膜電位イメージング)が確立された。膜電位イメージングは複数の神経細胞から同時に膜電位を記録できるという大きな利点があり、生体への応用を目指した研究が盛んにおこなわれている。
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