膜電位の対応性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 16:45 UTC 版)
吸光および螢光シグナルの大きさは通常、おのおのの背景光、すなわち静止電位での螢光強度および吸光度 との変化分 との比、すなわちfractional changeで表す。実際には、吸光変化は入射光に対し前方方向での透過光の変化として推定されることになる。したがって、透過光の増大は吸光の減少に、透過光の減少は吸光の増大に対応する。光学的シグナルは電極を用いて記録される活動電位とほとんど同じ時間経過と同じ形状を示す。このことだけからも、光学的変化が活動電位をよくコピーしていることがわかるが、膜電位と光学的変化の直接的な対応関係は、ヤリイカ巨大神経線維での膜電位固定法を用いた実験によって詳細に検討された (Cohen, et al, 1974 ; Ross, et al, 1977 ; Gupta, et al, 1981)。膜電位感受性色素で染色したヤリイカ巨大神経線維を膜電位固定して、膜電位、膜電流、吸光、および螢光を同時記録すると、光学的変化は膜電位を脱分極、過分極側いずれに固定した場合でもみられ、変化の方向は逆であるが、変化の大きさは等しく対称性を示す。しかしながら、先にもふれたように、膜電流との対応性は全くみられず、光学的変化が過分電極側への膜電位変化に対しても脱分極の場合と同じように現れることが、光学的変化はコンダクタンスの変化には依存せず、興奮のメカニズムとは関係がないということの根拠になった。また、膜に対して非透過性の色素であるfast-response dyesでは神経線維の外側から染色した場合と内側から染色した場合とでは、吸光あるいは螢光変化の方向は逆になる (Gupta, et al, 1981)。この場合も脱分極側、過分極側への電位変化に対する吸光、螢光の変化の方向の対称性はくずれない。膜電位をいろいろなレベルに固定し、これに合わせて、測定された吸光、螢光の変化を膜電位に対してプロットすると、静止電位から±100mVぐらいの範囲では光学的変化と膜電位は近似的に直腺関係で対応づけられる。Tasakiら (1972) はTNSを用いた実験ではこのような直接関係は脱分極側ではくずれると報告したが、その後の実験では (Conti, et al, 1974), 直線関係が得られている。また、このような光学変化と膜電位間の直接関係はイカ神経線維以外でも確かめられた (Patrick, et al, 1971)。
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