胎児における心臓の発生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:28 UTC 版)
ヒト胚の心臓は受胎後約21日或は通常妊娠日決定に用いる最終標準月経期(LMP: the last normal menstrual period)後5週間で鼓動を始める。母体の心拍数(約75-80/分)近くから始まり、胎児心拍数(EHR: the embryonic heart rate)は初月の間直線的に加速し、7週間目にはピーク165-185bpm(beat per minute)に達する(LMP後なら9週間目)。この加速は、3.3bpm/日、凡そ10bpm/3日、つまり初月で100bpmの増加である。LMP後9.2週間目でのピークの後に、胚の心拍数は15週目で約150bpm(+/-25bpm)に減速し、その後最終的には平均的な145bpmに減少する。 ヒトの心臓は内臓の中で最初にできあがる。胎生20日頃には自立的な脈動が始まり、血液の循環を行い出す。これによって母体から供給された酸素や栄養が行き渡り、他の臓器が分化・成長を行えるようになる。発生初期の心臓は初期胚の前方(中胚葉の心臓発生領域)につくられる1本の単純な筒であり、原始心筒と呼ばれる。これが、周囲の内・外胚葉から細胞の増殖因子や接着因子を受け、転写因子を活性させながら屈曲してループ状になり、さらに中隔膜が形成されて2系列の並列循環構造へ成長する。 複雑な発生過程を経る心臓は、形成に多くの遺伝子が関わる。そのために先天性心疾患は頻度が高く、100人に1人ほどの割合で生じる。また心臓の心筋細胞は誕生後に細胞分裂を行なわず、大きさは生理的肥大によって成長する。そのため何らかの疾患で細胞が減少しても元に戻らない。そのため、末期の心臓疾病治療には移植しか手段が無い。そのため、iPS細胞など未分化細胞による再生治療の研究が盛んに行われている。 「心臓の発生」も参照
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