考えられる強力なX線と紫外線放射が惑星系に及ぼす影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 14:33 UTC 版)
「TRAPPIST-1」の記事における「考えられる強力なX線と紫外線放射が惑星系に及ぼす影響」の解説
2017年、Emeline Bolmont らの研究チームは、TRAPPIST-1によるbとcの遠紫外線(FUV)および極紫外線(EUV / XUV)照射で予測される影響のモデル化を行った。彼らのモデル結果によると、2惑星は初期の水の含有量に応じて、地球上の海洋に含まれる量の15倍分の水を失った可能性が示唆されている(実際の損失量はさらに少ないとみられている)。それにもかかわらず、2惑星は元々は居住可能であり続けるのに十分な水を保持していた可能性があり、より外側を周回する惑星が失う水の量はさらに少ないと予測された。 しかし、その後の Peter Wheatley らによるXMM-Newtonを用いて行われた研究で、TRAPPIST-1が自身よりも遥かに大きい太陽に匹敵するレベルのX線を放射しており、Bolmontらが想定したレベルの50倍もの極紫外線が放射されていることが判明した。このことから、WheatlyらはTRAPPIST-1のハビタブルゾーンにある、地球サイズの惑星の一次大気(英語版)もしくは二次大気(英語版)が大幅に変化していると予測している。しかし、この研究結果では「惑星大気の放射物理学と流体力学を無視」しており、大気への影響はかなり過大評価されている可能性があるとも述べられている。確かに、極紫外線による非常に厚い水素とヘリウムから成る一次大気の散逸は、実際には惑星に居住性をもたらすのに必要となるかもしれない。また高レベルの極紫外線は、Bolmontらによる予測よりも惑星dにおいて水が保持される可能性を低くすると予想されるが、高レベルの放射を受けている惑星であっても、潮汐固定された惑星の極域または夜側のコールドトラップに水が残される可能性がある。 TRAPPIST-1のハビタブルゾーンにある惑星にオゾン層による保護機能を備えた地球のような高密度の大気が存在する場合、表面の紫外線環境は現在の地球と同じような感じになると考えられている。 しかし惑星の大気が無酸素大気(Anoxic atmosphere)であるならば、より多くの紫外線が地表に到達するようになり、紫外線に対して非常に耐性のある陸上の極限環境微生物であっても厳しい表面環境になってしまう。将来の観測でTRAPPIST-1系の惑星の1つからオゾンが検出された場合、その惑星は地球外生命探査における主要候補となるだろう。
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