美祢層群の後背地
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 02:15 UTC 版)
美祢層群の堆積物は、平原層では下部ほど秋吉帯起源の砂岩・泥岩・チャート・酸性凝灰岩・石灰岩などの砕屑岩類の礫・岩片の割合が増加し、桃ノ木・麻生層では酸性火山岩-深成岩・塩基性-中性火山岩などの火成岩類の礫・岩片が卓越するとされている。ほかには蛇紋岩や変成岩などの岩片が含まれる。 美祢層群の後背地は、美祢層群各層の堆積岩に含まれる砕屑性クロムスピネルの化学組成や桃ノ木層の蛇紋岩礫に内包されるクロムスピネルの形態から大江山オフィオライトの超苦鉄質岩、同じく各層の砕屑性クロムスピネルの化学組成から長門構造帯の蛇紋岩がその候補として挙げられている。砕屑物の主要な供給源が秋吉帯から火成岩類の露出地域へ移っていく中間の過程で蛇紋岩礫や砕屑性クロムスピネルの供給が増加することから、この時期の後背地には大江山オフィオライトや長門構造帯の蛇紋岩が近接して露出していたとされ、これらを根拠として長門構造帯の蛇紋岩メランジは、大佐山蛇紋岩メランジのような大江山オフィオライトに伴われる地質体であった可能性が指摘されている。美祢層群の位置する秋吉帯よりも大陸側には酸性火成活動を生じた成熟した火成弧が存在し、また、美祢層群の堆積物に含まれる砕屑性ザクロ石はその化学組成から、高-中変成度変成岩類や花崗岩が後背地に露出していたとされ、大陸地域の変成岩に起源をもつ可能性の高いものもあるとされている。 厚狭地区の美祢層群津布田層下部において厚い凝灰岩が挟在しており、また、熊本県の肥後帯における火成活動の履歴および美祢層群の堆積物と佐賀県脊振山地の肥後帯の変成岩とに含まれるザクロ石の組成領域が重なるとともに、熊本県の肥後帯のザクロ石の組成に近いものも含まれることから、美祢層群の北西側の後背地では約2億3500万年前には肥後帯を基盤として後期三畳紀の凝灰岩の給源となる火山が形成されていたことが示唆されている。その後、南中国地塊で海嶺沈み込みと関連した後期インドシナ期花崗岩類の活動(234-205 Ma)が始まっている。なお、海嶺付近の海洋プレートの沈み込みに伴い沈み込み角度が浅化することで高圧変成岩の上昇をもたらす造構環境となる。
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