緊急の場合の専決処分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 08:52 UTC 版)
第179条 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第162条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意及び第252条の20の2第4項の規定による第252条の19第1項に規定する指定都市の総合区長の選任の同意については、この限りでない。 議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。 前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。 前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。 第179条による専決処分は、議会の議決又は決定を得られないときに普通地方公共団体の長の権限として認められるのであり、以下の場合がある。なお第3項の規定により、長は議会の承認を求めなければならないのであるが、議会の承認が得られなかった場合といえども当該処分の効力そのものには影響がない。長の政治的責任が残るだけである(昭和21年12月27日地発乙641号)。第1項所定の要件を欠く瑕疵があっても、後に議会の承認があればその瑕疵は治癒される(名古屋高判昭和55年9月16日)。常任委員会が専決処分の事後承認案を審査中議員の任期が満了した場合、改選後の議会に再び報告し、その承認を求める必要はない(昭和34年4月22日自丁行発64号)。 議会が成立しないとき 具体的には、在任議員の総数が議員定数の半数に満たない場合である(第113条参照)。 第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき 以下の場合は、出席議員の数が議員定数の半数に達しなくても会議を開くことができるが(第113条ただし書)、この場合においても出席議員の数が議長の外2名を下ることは許されない。 第117条の規定による除斥のため半数に達しないとき 同一の事件につき再度召集してもなお半数に達しないとき 招集に応じても出席議員が半数を欠き議長において出席を催告しても、なお半数に達しないとき又は半数に達してもその後半数に達しなくなったとき 普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき 絶対に議会の議決又は決定を得ることが不可能な場合ではないが、当該事件が特に緊急を要し、議会を招集してその議決を経ている間に、その時期を失するような場合である。その認定は、普通地方公共団体の長が行うのであるが、長の認定には客観性がなければならない(自由裁量ではなく、羈束裁量に該当する。昭和26年8月15日地自行発217号)。 議会において議決すべき事件を議決しないとき 「議会において議決すべき事件」とは、議決権限を有する事件であることのみをもっては足らず、それが同時に法令上議決が必要であるものでなければならない。「議決しないとき」とは、上記の場合のほか、議決を得ることができない一切の場合をいい、その原因が議会の故意に基づく場合はもちろん、外的事情に基づく場合をも包含する。 長が再議に付した案件を議会が議決しなかった場合、専決処分を行い得るが(昭和23年7月7日自発513号)、再議の結果3分の2以上の同意を得られなかったときは専決処分することができない(昭和23年8月25日自発690号)。
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