結核
★1.結核で死ぬ女。
『風立ちぬ』(堀辰雄) 秋も近いある午後、いつものように節子は草原で絵を描いていた。不意に、どこからともなく風が起こり、画架が倒れた。「私」は節子の肩に手をかけ、「風立ちぬ、いざ生きめやも」という詩句を繰り返し口ずさんだ。「私」と節子は婚約するが、節子は胸の病が進行し、八ヶ岳山麓のサナトリウムに入る。「私」も一緒にサナトリウムへ行き、節子が死ぬまでの月日を、ともに過ごす。
『小さき者へ』(有島武郎) お前たち(=有島武郎の幼い3人の子供)が4つと3つと2つの時、お前たちの母上は結核と診断された。H海岸の病院に入院する母上は、2度とお前たちに会わない決心をしていた。病菌をお前たちに伝えるのを恐れたばかりではない。お前たちの清い心に残酷な死の姿を見せて、お前たちの霊魂に傷を残し、お前たちの一生を暗くすることを恐れたのだ。母上の死から1年がたった。小さき者よ。お前たちの父と母との祝福を胸にしめて、人の世の旅に登れ。
『ラ・ボエーム』(プッチーニ) ボヘミアンである詩人ロドルフォは、お針子のミミと知り合い、2人は恋人どうしになるが、ミミは肺結核に侵されていた。ロドルフォは貧しく、医者を呼ぶことも薬を買うことも困難なので、心ならずもミミと別れ、彼女が金持ちのパトロンを持つように仕向ける。ミミはしばらくは子爵の息子に囲われるものの、死期を悟り、ロドルフォの傍で死にたいと願って、彼の住む屋根裏部屋へやって来る。ミミは、ロドルフォや彼の仲間のボヘミアンたちに見取られて、息を引き取る。
*→〔娼婦〕2の『無限抱擁』(瀧井孝作)・〔すれ違い〕2の『不如帰』(徳冨蘆花)。
★2.結核の男が刺殺される。
『酔いどれ天使』(黒澤明) 終戦直後。闇市近くの眞田医院に、若いやくざ松永が、銃で撃たれた傷の治療に訪れる。眞田医師は、松永が結核に侵されていることを見抜き、注意を与える。しかし松永は酒と女におぼれる生活を改めず、喀血して寝込む。松永は、自分の縄張りも情婦も兄貴分の岡田に奪われ、争ったあげく、岡田に刺されて死ぬ。眞田医院には女学生も通院していたが、彼女は眞田医師の言うことをよく聞き、結核を克服した。
*結核で死ぬ男→〔病気〕12の『のんきな患者』(梶井基次郎)。★3.結核に感染しても発症せず、健康人のごとく生活できる場合もある。
『仮面』(森鴎外) 文科大学生・山口栞(24~25歳)は、「結核」と診断されて動揺する。医学博士・杉村茂(48~49歳)が、「おれも17年前に喀血して、検査をしたら陽性だった」と、山口に打ち明ける。しかし杉村はそのことを、今日まで誰にも言わなかった。その後の検査ではずっと陰性だが、杉村は独身を通している。ネエゲリイ(スイスの医学者)は、「ほとんどの死体に、結核の古い痕が認められる」と報告しており、治癒や長期生存も可能なのだ。山口は、「自分も杉村博士のように仮面をつけて、このまま学業を続けよう」と考える。
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