細菌鞭毛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 20:27 UTC 版)
大腸菌をはじめとするバクテリア表面にみられる。直径20ナノメートル、長さ約十マイクロメートルのねじれた繊維。暗視野顕微鏡などの光学顕微鏡で観察することができる。真核生物のものと異なるのは、チューブリンからなる微小管ではなく、細菌では代わりにフラジェリンというタンパク質が重合して伸びた繊維でできていることである。真核生物の鞭毛とは運動機序が異なりダイニンの利用は見られない。 それぞれの繊維の付け根には回転モーターがあり、細胞内外のイオンの透過に共役した電気化学的ポテンシャルを運動エネルギーに変換することで回転する。そのためこのモーターの回転にはATPは必要ない。消費されるのは水素イオン濃度差である。このモーターの機構は電子伝達系によって駆動するATPaseと共通する部分が多い。フラジェリンのらせん状の繊維がこのモーターで回転すると、こうした微小な世界ではレイノルズ数が小さく水の粘性が高くなっているため、いわば粘っこい水の中にコルク抜きをねじ込むような形になり、細胞は高速で前進する。 回転モーターを除く鞭毛部分はIII型分泌装置とほぼ同様である。III型分泌装置を持つ細菌は比較的狭いグループに限られることから、鞭毛がIII型分泌装置に進化したとする見方が一般的だが、その逆とする説もある。 鞭毛繊維部分の構築は先端から行われる。これはIII型分泌装置が細胞外にたんぱく質を放出する際と同様の機構で、中空になっている鞭毛繊維部分の中をフラジェリンが通って先端に輸送される。 細菌鞭毛は、真核生物鞭毛と区別するために慣用的に「べん毛」と書かれることもある。
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