第1楽章 レント - アレグロ・ノン・トロッポ
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「交響曲 (フランク)」の記事における「第1楽章 レント - アレグロ・ノン・トロッポ」の解説
ソナタ形式、ニ短調 荘重なレントの導入ではじまる。冒頭で低弦が奏する問いかけるような動機(譜例1)は全曲を貫いて現れるもので、ダンディは「作品のAlphaでありOmegaである」と述べている。 陰鬱に現れるこの中心動機 (D-C♯-F)は、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番終楽章の "Muß es sein?"(そうでなければならないのか?)の動機、もしくはフランツ・リストの交響詩『前奏曲』冒頭や、ワーグナーの「ニーベルングの指環」(「ワルキューレ」第2幕第4場)に現れる「運命の動機」との類似が指摘されている。フランク自身の「交響的大曲」の主要主題とも類似がみられる。 譜例1 アレグロ・ノン・トロッポにテンポを上げると、中心動機が第1主題として力強い姿で現れる(譜例2)。しかしすぐに力を失い、レントの冒頭からの流れが短三度上のヘ短調で繰り返される。三度関係の転調はフランクが多用するものであり、ダンディは『作曲法講義』において、ニ短調とヘ短調の二つの柱が第1楽章全体の展開を支えていると分析している。再び譜例2が現れると、本格的に主部が始まる。 譜例2 ヘ長調に到達して現れる、流れるような経過主題(譜例3)をギィ・ロパルツは「希望の動機」("motif d'espérance") と呼び、総奏で現れる第2主題(譜例4)を「信仰の動機」("motif de croyance")と呼んでいる。 譜例3 譜例4 展開部はヘ短調の柱を中心に進み、既出の動機が次々に現れる。レントにテンポを落とし、楽章冒頭の動機(譜例1)が力強くカノンの形で現れると再現部が始まる。変ホ短調で始まる譜例2に続き、経過主題と第2主題(譜例3、4)は型どおりにニ長調で再現される。コーダではまた譜例1がト短調のカノンで現れ、最後の和音で急激にニ長調へ解決する。
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