空間的完備ハイティング代数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 07:19 UTC 版)
「ストーン双対性」の記事における「空間的完備ハイティング代数」の解説
ストーン双対性の定式化で登場するもう一つの圏は、空間的完備ハイティング代数というある種の束を対象とする圏SFrmである。ハイティング代数とその圏の定義を述べる為まず束の定義とその性質を述べる。 定義(束とその性質) ― 順序集合Fが束(lattice)であるとは任意のa 、b ∈ F に対しa∨b := sup(a,b)、a∧b := inf(a,b)が常に存在する事をいう。F が完備束(complete lattice)であるとはF の任意の部分集合A に対しsup(A )とinf(A )が存在する事をいう。F が有界束(bounded lattice)であるとはF に最大元と最小元が存在する事を指す。(最大元と最小元を以下それぞれ1、0と表す)。 ハイティング代数は有界束の一種として定義される。なお束である(すなわち順序集合である)にも関わらず空間的完備ハイティング「代数」という名称なのは a∨b := sup(a, b), a∧b := inf(a, b) をそれぞれ乗算と加算とみなす事で束を代数だとみなせるからである。 ハイティング代数はブール代数を一般化した有界束であり、ブール代数と同様「a ∨b 」と「a ∧b 」が定義でき、さらに「IF a THEN b 」を意味する「a →b 」が定義できるという特徴を持っている。また「a の否定」を意味する「¬a 」を「a → 0 」として定義できるがブール代数と違い二重否定の法則 ¬ ¬a =a は成り立つとは限らない。 定義(完備ハイティング代数) ― ハイティング代数(Heyting algebra) Fとは以下の性質を満たす有界束の事である。 任意のa 、b ∈ F に対し、集合 { x ∈ F ∣ a ∧ x ≤ b } {\displaystyle \{x\in F\mid a\wedge x\leq b\}} は最大元を持つ。 以上の条件で存在が保証されている最大元を以下「a → b 」と表記する。ハイティング代数であってしかも束として完備であるものを完備ハイティング代数という。 ストーン双対性の定式化には単なる完備ハイティング代数ではなく空間的(spatial)な完備ハイティング代数を用いるが、「空間的」という単語の定義を説明するには準備が必要な為、後の章にまわす。 X を位相空間とするとΩ(X )には以下のようにして完備ハイティング代数の構造が入る。ここで A ∘ {\displaystyle A^{\circ }} はA の内部を表す。 ⋁ λ O λ := ⋃ λ O λ {\displaystyle \bigvee _{\lambda }O_{\lambda }:=\bigcup _{\lambda }O_{\lambda }} ⋀ λ O λ := ( ⋂ λ O λ ) ∘ {\displaystyle \bigwedge _{\lambda }O_{\lambda }:=\left(\bigcap _{\lambda }O_{\lambda }\right)^{\circ }} ( O 1 → O 2 ) := ( O 1 c ∪ O 2 ) ∘ {\displaystyle (O_{1}\to O_{2}):=(O_{1}{}^{c}\cup O_{2})^{\circ }} 完備ハイティング代数の事を枠 (frame)ともいう。空間的な枠(Spatial Frame)の圏SFrmは以下のように定義される。 定義(空間的完備ハイティング代数の圏) ― 空間的完備ハイティング代数の圏SFrmは以下のように定義される: 対象:空間的完備ハイティング代数 射:順序を保つ写像f でf (a ∧ b) = f (a )∧f (b)、f (∨ A) = ∨f (A )が定義域の任意の元a 、b と定義域の任意の部分集合A に対して成り立つもの。ここで∨A := sup(A )。 上述したようにSFrmの射は、有限積と無限和を保つ。これは位相空間において開集合の有限積と無限和が再び開集合となる事と関係している。
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