空間的コヒーレンスの必要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/20 23:32 UTC 版)
「ラマン効果」の記事における「空間的コヒーレンスの必要性」の解説
励起光中の点 A と 点 B が互いに x だけ離れているものとする。一般的に、励起周波数は散乱されたラマン周波数と等しくないので、対応する波長 λ および λ' も等しくない。したがって、位相シフト Θ = 2πx(1/λ − 1/λ') が引き起こされる。Θ = π の場合、点Aと点B由来の散乱光は互いに打ち消しあい、AB方向についてのラマン散乱光は弱くなってしまう。 ここで、複数の入射光を用いてビームを交差させることで、入射光と散乱光の位相シフトが起きない方向ができることがあり(位相整合条件)、この場合非線形ラマン散乱は光ビームとして出力される。こうした非線形ラマン散乱光を効率よく得るためには、いくつかの位相整合の技法が存在する。 - 光学的に非等方な結晶中では、二つの偏光の異る光線の伝播モードに対して屈折率が異る場合がある。もし、これらのモード間で四重極(ラマン)共鳴によるエネルギー移動が存在するとき、位相は全経路にわたってコヒーレンスを保ち、エネルギーの移動も大きくなりうる。これを光パラメトリック増幅器と呼ぶ。 - うなりが現われないように、光をパルスにすることもできる。 これがインパルシブ誘導ラマン散乱 (ISRS) であり、パルス長は関連する時定数よりも短くなくてはならない。ラマン光と入射光との干渉がうなりの出現を許すには短すぎるため、周波数シフトはおおよそ、ベストな条件でパルス長の三乗に反比例する。パルス長が長すぎると ISRS は非常に弱くなってしまうため、実験室内でこれを達成するにはフェムト秒レーザーパルスを用いる必要がある。したがって、ISRS は通常の時間的コヒーレント光の生成に使われるナノ秒パルスでは達成できない。
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