稲取のハンマアサマ(静岡県)
稲取のハンマアサマ
名称: | 稲取のハンマアサマ |
ふりがな: | いなとりのはんまあさま |
種別1: | 風俗習慣 |
保護団体名: | |
選択年月日: | 2002.02.12(平成14.02.12) |
都道府県(列記): | 静岡県 |
市区町村(列記): | 賀茂郡東伊豆町稲取 |
代表都道府県: | 静岡県 |
備考: | 毎年9月8・9日 |
解説文: | 稲取のハンマアサマは、伊豆半島の東海岸に位置する静岡県賀茂郡東伊豆町稲取に伝承される行事で、浜万年青【はまおもと】の葉で人形【ひとがた】や烏賊【いか】、秋刀魚【さんま】などの姿を切り抜いたものを作り、これを海に流す行事である。稲取では浜万年青をハンマアサマといい、行事の名称が同時に行事に使う材料の名前にもなっている。 ハンマアサマは八日の昼ころ、用意しておいた浜万年青の葉で、人形と烏賊、秋刀魚を作ることから始まる。人形は葉の緑の部分で作る。葉を三角に切って左前になるようにたたみ、これに刀をさして人形を作る。刀は四角に切った小さな浜万年青の葉に松葉をさして作る。さらに浜万年青の葉の白い部分を使って、烏賊と秋刀魚の姿を切り抜いて作る。人形の数は五体とも七体とも、あるいは家族の数だけ作るともいい家によって異なり一定していない。烏賊と秋刀魚の数も家によって違うといわれており、また最近では金目鯛漁が盛んなこともあり、烏賊、秋刀魚の他に金目鯛も切り抜いて作っている家もある。 こうして作った人形と烏賊と秋刀魚などを盆に載せ、家の床の間に一晩供えておく。また、この日カシワモチを作って一緒に供える。カシワモチは、練った小麦粉をまるめて中に小豆餡を入れたものを、サルトリイバラの葉に包み、蒸して作ったものである。一晩床の間に飾った人形と烏賊、秋刀魚は、翌九日の昼から夕方にかけて海に流しに行くが、カシワモチは持っていかず家に残しておく。流す場所は外海に面した海岸で毎年決まった場所であるが、家によって異なる。 盆に載せて海まで持っていくと、まず人形を一体ずつ流し、続いて秋刀魚と烏賊を流す。このときは泣きながら流すといい、かつては「秋刀魚と烏賊といっぱい来てくだっしぇーよ」とか、「烏賊と秋刀魚をとらしてくだっしぇーよ」いいながら流していたが、現在では「漁をさしてくだっしぇーよ」といいながら流すともいわれている。また、流しに行くのは女や子どもだといわれているが、家によって異なり一定していない。 このハンマアサマには次のような由来伝説が伝えられている。昔、稲取の人たちが筏に乗って流れ着いた七人の侍の死体に、烏賊と秋刀魚を寄せてくれればねんごろに葬ると約束して、海岸そばの小高い所に葬ったところ、その年は烏賊と秋刀魚の豊漁続きになった。それ以来、稲取では大漁祈願と七人の侍の供養のため、浜万年青の葉で人形と烏賊と秋刀魚の姿を切り抜いて祀り、海に流すのだというものである。現在もハンマアサマの石碑が稲取岬の先端に祀られており、老人たちによって供養が続けられている。 |
生産・生業: | 神津島のかつお釣り行事 種子島のまるきぶねの製作習俗 種子島宝満神社のお田植祭 稲取のハンマアサマ 筑前・筑後の水車習俗 美濃の水車習俗 背負運搬習俗 |
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