科学者コミュニティと社会の関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:56 UTC 版)
「人新世」の記事における「科学者コミュニティと社会の関係」の解説
人新世の概念は、学術的な議論の積み重ねによって民主的に定まっていったボトムアップ型の経緯を持つ。この点で、国際政治においてトップダウン型に普及したミレニアム開発目標(MDGs)や持続可能な開発目標(SDGs)などの語とは異なる。他方で、科学の方向性が大企業やその影響を受けた政府に左右されると、民主的かつボトムアップ型の性質が影響を受ける可能性がある。 人新世概念の普及に貢献したクルッツェンは、オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞しており、隠喩の力を熟知していた。たとえば「大気中のオゾン濃度の減少」ではなく「オゾンホール」と呼んだほうが、人々の想像を喚起して環境問題を考えさせる影響は大きい。人新世についても、クルッツェンは人類と自然の関係の隠喩だと語っている。 科学者の研究と、社会に及ぼす影響のギャップが問題とされている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(英語版)(IPBES)では地球のエコシステムに関する知見を報告書にまとめたが、一般社会やメディアでは注目を集めず、経済政策に反映されていない。気温上昇を産業革命以降からの1.5度から2度以下に抑えるための二酸化炭素の排出可能量は600から800ギガトンとされ、2016年に排出減少を始めれば25年の猶予があったが、2025年に排出減少を始めた場合は10年の猶予となり遅すぎるという警告も出された。パリ協定では21世紀中に気温上昇を2度未満に抑えることが目標とされているが、パリ協定以降に各国が出した削減目標では、21世紀中に3度上昇すると予想されている。
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