真空蒸着の原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 08:06 UTC 版)
真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱し気化もしくは昇華して、離れた位置に置かれた基板の表面に付着させ、薄膜を形成するというものである。蒸着材料、基板の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。蒸着材料は、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類と光学特性を有する薄膜(光学薄膜)では主にSiO2、TiO2、ZrO2、MgF2などの酸化物やフッ化物を使用する。蒸着は金属の他、樹脂や硝子等にも利用され、紙などにも処理が可能である。 成膜する際に基板や蒸着材料によってはRFプラズマやイオン銃照射により蒸着前処理を施す事により密着性を向上できる。しかし、被蒸着物が樹脂の場合はこの前処理を行った場合逆効果になる物があるため被蒸着物の内容が明らかでない場合は、予め調査及び事前試験する必要がある。 ここで、RFプラズマとは、真空槽内にアルゴンや酸素のガスを導入し電源周波数13.56MHz(電波法における高周波利用設備に該当:ISMバンド)の高圧電源によりイオン化させ被蒸着物の表面を改質する手法である(RFイオンプレーティング)。 また、イオン銃はイオン銃本体内部にアルゴンや酸素ガスを導入しイオン化させ本体上面に設置された直径1mm程度の穴より被蒸着物の表面に向けイオンを照射する機器である(IAD:Ion Assist Deposition)(2)。 容器を真空にする理由は、蒸着材料の分子が基板に達する前に、容器内の残存気体分子に衝突することを防止するためと、蒸着材料の蒸発温度を下げて蒸着を容易にするためである。10-3~10-4 Pa程度の真空度が必要とされる。真空のためには真空ポンプが用いられる。 蒸着中の膜厚の計測は、分光学的に反射率や屈折率を計測する方法(XRD)や、水晶振動子の蒸着材料付着による振動数の変化を測定する方法などがある。
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