白人の誤解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 18:19 UTC 版)
合衆国の白人たちは、インディアンの文化について、根本的に勘違いをしていた。白人たちはインディアンの酋長を、「部族を率いる指導者」だと思い込んでいたのである。しかし、完全合議制民主主義社会であるインディアンの社会では、独任制の「首長」や「部族長」は存在しない。「部族の指導者」だと白人が考えている「酋長」は、実際は「調停者」であって、「指導者」ではない。インディアンの戦士は、おのおの個人の判断で行動するものであって、誰かに指図されるような存在ではない。白人が考えるような「軍事指導者」や「戦争酋長(War Chief)」は、実際にはインディアン社会には存在しない。インディアンの戦士団は集団であって、命令系統のもとで動くような「軍隊」、「隊」ではない。 しかし、「酋長」を「指導者」と思い込んでいる白人たちは、それまでのインディアンとの条約交渉でもそうであったように、スー族に対しても、「部族長」、「大指導者」と盟約を結ぼうとした。彼らが調停書に署名(×印を書き込むだけである)すれば、スー族はこれに従うだろうと考えたからである。しかし、スー族を始め、インディアンの社会にこのような「絶対権力者」は過去にも現在にも存在しない。 「気前の良さ」を美徳とし、すべてを共有するのがインディアンの文化である。「調停者である酋長が紙に×印を書いたから、領土を明け渡せ」と言われて納得するインディアンはいなかった。和平委員会は、「言うことを聞かなければ我々の戦争酋長(War Chief)がお前たちを殺しに軍隊をよこす」と警告したが、これもスー族には理解不可能だった。「戦争酋長」というものはインディアンの社会には存在しないからである。スー族は、盟約を破り次から次へと要求を変える白人に、「白人には一体何人酋長(調停者)がいるのか」と、不信を募らせる一方だった。 インディアンの文化を理解していない白人のこうした思い込みによる力づくの和平は、インディアン戦士の怒りと不満を買うばかりだった。
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