発動機と翼面荷重値を巡る議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 06:02 UTC 版)
「烈風」の記事における「発動機と翼面荷重値を巡る議論」の解説
開発開始に当たってまず問題となったのは、多くの日本機と同様に搭載発動機の選定であった。要求性能を達成するには最低でも2,000馬力級の発動機が必要と考えられ、候補としては中島飛行機が海軍と協力して開発を進めていたNK9(後の誉)とそれを追う形で三菱が開発していたMK9(後のハ四三)の二つしか存在しなかった。どちらも空冷二重星型14気筒の1,000馬力級発動機である栄と金星を18気筒化することで2,000馬力級を狙った高性能発動機であり、NK9は馬力の小さい初期型ではあるが既に海軍の審査に合格して十五試陸上爆撃機(P1Y1。後の銀河)で各種試験が実施中であるという強みがあり、MK9はNK9よりやや大型ながらより大馬力を期待できるという強みがあった。 しかも海軍側から計画書では150 kg/m2程度とされている翼面荷重値(機体重量を主翼面積で割った値)を130 kg/m2に抑えて欲しいという要望が出されたことが更に問題を複雑にした。三菱の試算では、NK9を搭載した場合は翼面荷重値を150 kg/m2としても馬力不足のため最高速度などの要求性能を満たせず、MK9を搭載した場合は翼面荷重値を130 kg/m2とすればなんとか要求性能を満たせるという結果が出た。しかし、MK9の開発はNK9より遅れており、MK9を搭載する場合はNK9搭載の場合より十七試艦戦の実用化は遅れると予想された(事実、ハ四三の量産開始は誉より1年ほど遅い昭和19年末になった)。このため、開発開始が当初計画より1年以上遅れている十七試艦戦の早期実用化を重視してNK9を推す海軍と、要求性能の達成を重視してMK9を推す三菱の間で意見の対立が起きた。4ヶ月以上に及ぶ議論の末に海軍はNK9を搭載するように三菱に通知するというやや強引な手段で決着をつけ、三菱側はかなり不満を抱きながらもこの決定に従っている。 翼面荷重値の問題については、130 kg/m2案(主翼面積30.86 m2)と150 kg/m2案(同28 m2)の両方を試作して性能良好な方を採用することとなり、まず130 kg/m2案を先行させることに決定された。その後、防弾装備の追加等による重量増加により、130 kg/m2案の主翼でも翼面荷重が150 kg/m2前後まで増加したため、150 kg/m2案の主翼は試作されなかった(キ八四(後の四式戦 疾風)でも装備追加による重量増加が起き、計画当初の主翼では翼面荷重値が高くなりすぎるため、試作二号機以降は15 %ほど面積を増した主翼に変更している)。
※この「発動機と翼面荷重値を巡る議論」の解説は、「烈風」の解説の一部です。
「発動機と翼面荷重値を巡る議論」を含む「烈風」の記事については、「烈風」の概要を参照ください。
- 発動機と翼面荷重値を巡る議論のページへのリンク