用法の混乱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 22:55 UTC 版)
この言葉の使用は、若干の混乱が見られる。使用や解釈に際しては注意が必要だろう。 法律用語としての単式蒸留器は、単なる原料の供給方法に関してであり、蒸留器の性能には全く関係ない。フラッシュ蒸留器 英:Flash evaporationなどは連続式蒸留器であるが単蒸留 (simple distillation)であるため成分を分離する能力が低い。 科学・工学分野では単式蒸留器はポットスチルだが、法律用語が指し示すものを文字通り解釈すると回分式蒸留器を指しており、混乱を避けるためか"単式蒸留器(ポットスチル型蒸留器)"などと但し書き付きで言及されることが多い。科学・工学、法律の各分野によって、意味するものが違う事に注意が必要である。 歴史的には、単式蒸留器は複式蒸留器と区別するために生じた用語であろう。したがって、蒸留缶(ポット)を一つだけ有する蒸留器の事を単式蒸留器、または単缶式蒸留器と呼称し、蒸留缶を複数有する蒸留器の事を復式蒸留器と呼称していたと思われるが、現在の法制度上、複式蒸留器は単式蒸留器と分類される。 更にややこしいのは、化学工学において単蒸留(simple distillation)や連続蒸留(successive distillations)といった全く別の概念が存在し、かつ、単式蒸留器や連続式蒸留器のことを単蒸留、連続蒸留と言及する例が存在する事である。ポットスチルにおいても、スワンネックは還流を企図しており、スワンネックの表面積、形状を変化することにより還流比を変える事ができる。そのため、ポットスチルは単蒸留(simple distillation)にはあたらない。 また英語でのポットスチル自体も、何らかの厳密な蒸留器のデザインを指しているということはないと思われ、法令上は蒸留した結果得られる蒸留酒のアルコール濃度が規定されているのみである。例えば、カリフォルニアブランデーでは蒸留し得られた蒸留酒(加水する前の蒸留酒)のアルコール濃度が85%以下でなければならない、コニャックでは、アルコール濃度が72%以下でなければならない。ともかく、何らかの機能やデザイン上の分類というよりは規定された手続きで法的に認められたアルコール濃度を実現するための蒸留器ということができるかもしれない。
※この「用法の混乱」の解説は、「単式蒸留器」の解説の一部です。
「用法の混乱」を含む「単式蒸留器」の記事については、「単式蒸留器」の概要を参照ください。
- 用法の混乱のページへのリンク