生存への脅威と課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 09:23 UTC 版)
沿岸性の鯨類全てに共通する問題だが、漁業用の定置網や船舶との衝突など人間の生活との間に生じる事故が大きな問題である。近年、ベーリング海でホッキョククジラと本種のハイブリッドが発見されたことで、新たなる脅威が危惧されている。温暖化で北極の氷が溶け、かつては流氷などにより遮断されていた他種との分布が重なり始め、交配が発生することである。危惧されているのは、ホッキョククジラやタイセイヨウセミクジラとの交配である。両種とも絶滅危惧ではあるが、太平洋のセミクジラよりは個体数が多いので、交配が度重なりハイブリッドの個体数が増えると、最終的にはセミクジラを圧迫し、「種」としての絶滅を助長してしまいかねない。タイセイヨウセミクジラとは互いに違う大洋に生息するが、北極の氷が溶けると互いの大洋への行き来が可能となる(すでにコククジラでは大西洋や南半球への進出が確認されている)。大西洋では、2013年および2014年に観測史上初めてホッキョククジラがファンディ湾に現れ、セミクジラ達の交尾グループに参加していた様子が確認されている。一方で、オホーツク海北西部、シャンタル諸島とその周辺では温暖化が提唱される以前よりもセミクジラとホッキョククジラの共存が確認されており、現在でも観察例がある。 なお、北西航路に氷が無くなると船舶が航海できるようになるため、その航路が北太平洋のセミクジラの回遊ルートを横切り、船との衝突による死亡数が増加する可能性を示唆する研究者もある。また、気候変動により海水の酸性化や変動、海流や水温、餌生物の発生範囲の変化が懸念されており、大西洋の亜種では回遊の変化がすでに確認されている。環境汚染や騒音が与える影響も依然として無視できない状況である。
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