現実世界のデータのフラクタル次元の概算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/30 00:35 UTC 版)
「フラクタル次元」の記事における「現実世界のデータのフラクタル次元の概算」の解説
上述のようなフラクタル次元の尺度は、形式的に定義されたフラクタルから得られたものである。しかしながら、生命体や現実世界の現象もまたフラクタルの特性を示すのであるから、一連の標本データのフラクタル次元を記述することは有用であることも多い。この場合のフラクタル次元は正確に求めることはできないが、概算は可能なはずである。例えば、自然界の海岸線は砂粒などの大きさという限界があるので厳密にはフラクタルではないが、リアス式海岸のような複雑な海岸線はフラクタル的な特性を示し、そのフラクタル次元は複雑さに応じて概ね 1 < D < 1.3 となる。 フラクタル次元の概算は、物理学、画像解析、音響学、リーマンゼータ関数の零点、(電子)化学プロセス、医学など、さまざまな領域で用いられている。応用の一例として、人間の大腸粘膜表皮はフラクタル的な構造を示し、これは表面積を最大化するためと考えられるが、病変するとそのフラクタル次元に変化が現れる。良性腫瘍では1.38、癌では1.50前後となり有意差があるとする研究があり、サンプルのフラクタル次元概算による客観的な診断が目指されている。 実際の次元の概算は数字的もしくは実験上のノイズに非常に敏感であり、また特にデータの量の制限に影響されやすい。極めて多くのデータ点の数が得られるのでない限り避けようのない限界が存在するので、フラクタル次元の概算に基づく主張、特に低次元での動的挙動の主張には注意が必要である。
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