犬ぞりの試み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 11:27 UTC 版)
船の物資無しでは、計画されていた探検を続けるのはもはや不可能である、今や主たる目的はイギリスへ帰還することそのものになった、とシャクルトンは周知したので、彼は当初、乗組員をポーレット島へ向かわせようと計画した。同島は、15年前に付近でスウェーデンの探検隊の船が沈んだ際、避難先とされたことがあったのだ。彼はこの島が西へわずか450km行ったところにあると信じており、その程度の距離なら十分到達可能と思われた。彼らは元々、南極大陸全体を横断するに足りるだけの物資を持っていたからである。 しかし、いざ旅を始めてみるとすぐさま問題が噴出した。救命艇と物資を曳いて行けるような平らな地表がなかったのである。海氷の表面に水平方向の圧力が加わると、海氷は捻じ曲げられて上へと積み上がり、大きな圧力隆起(写真参照)を形成し、その高さはしばしば3メートルに及んだ。更に気候が暖かくなり海流が探検隊の位置を北へと押しやるようになると、流氷は薄くなって亀裂を生じ始め、犬ぞりでの移動の危険性は増した。 シャクルトンは二回にわたって探検隊を陸へ進ませようとしたが、慎重に進んだため速度が遅過ぎた。ある時は7日間で僅か18kmしか進めないこともあった。もはや必要な距離を移動するための物資も無くなったことから、シャクルトンは当初の決定を取り消し、探検隊員達は氷上にテントを張ってキャンプすることとした。物資不足の原因は、探検隊の負担を軽くしようとしたためとはいえ、船荷の多くを船に置き去りにして来ていたことにあった。物資不足を受けて、一行は後々に備えて持参の保存食には手を付けず、アザラシやペンギンを主要な食料とした。また、あらゆる燃料をアザラシの脂肪で賄った。しかしその後、氷上のアザラシやペンギンはどこかへと消えてしまったため、食料の割り当ては対応して減らされ、最終的にソリ犬すら食料とした。
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