濫訴防止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/06 21:44 UTC 版)
株主代表訴訟が日本の商法に取り入れられたのは昭和25年改正商法による。同改正によって株主総会が万能の機関でなくなり取締役会の権限が強化されたが、それに対応して株主総会の監督権限を強化する必要があった。そこで事後的責任追及を可能とすることにより、取締役会による自己監査と監査役による監査を担保するための制度として株主代表訴訟制度が同じ昭和25年の商法改正で導入された(詳しい趣旨は前述の通りである)。 当初からこの制度には経済界、すなわち会社の経営陣からの反発が強かった。些細な事項についていちいち訴訟を起こされては会社経営が停滞化するというのが彼らの主張である。一方で、会社経営に株主が参加する機会を減らそうという思惑から反発しているのではないかという主張もあった。ともかくも経済界の要望が受け入れられ、昭和26年の商法改正によって被告となった経営陣が原告株主の悪意を疎明すれば、裁判所は原告に対して担保の提供を命じることができるとした。担保提供命令があったにもかかわらず原告が担保を提供しない間、被告は訴訟に応じる必要はなく、期間内に担保が提供されないならば訴えが却下される可能性もある(民事訴訟法81条を参照)。 ここでいう「悪意」の意味については争いがあるが、請求に理由がないこと、または株主代表訴訟制度を逸脱した不当な目的の訴えによって被告(取締役等)を害することを知りつつ訴訟を提起した場合のことをいうとした決定がある(東京高等裁判所平成7年2月20日決定 判例タイムズ895号252頁)。 このように株主代表訴訟に対しては否定的な見解が強かった。現実にも、会社経営の健全化を目指して株主代表訴訟が提起されることは稀で、専ら政治活動(市民運動)、または総会屋による経営攪乱もしくは売名行為の手段として利用され、一般にもそう認識されることが多かった。
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