濡衣
濡衣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/05 20:08 UTC 版)
彼が吉原通いの際にいつも差料としていた脇差は、相当な業物であったという。ある初夏の雨の晩、吉原へ続く土手を歩いていると、ずぶ濡れの乞食坊主に出会った。暁雨が戯れに「世の中は辛いだろう。何か望みがあれば言ってみろ」と聞いたところ、坊主は「饅頭を腹一杯食べて死にたい」と答えたので、暁雨は吉原の出入の饅頭店の饅頭を蒸籠ごと買い、それを若い者に運ばせて坊主の所に戻り、「好きなだけ食べろ」と促すと坊主はたちまちの内に饅頭全部を平らげてしまった。暁雨が「ほかに望みはあるか」と聞くと坊主は「この世にいてもたいして役には立たぬ命、饅頭を腹一杯食えた今、ここで死んでも悔いはありません」と答えた。暁雨が「では、死にたければその命俺が貰おうか」と言うと坊主は「はい」と答え、目を閉じて手を合せ首を差し出したまま身動き一つしなかった。坊主の覚悟に感じ入った暁雨は一刀のもとに「水もたまらず衣の上より袈裟がけに」斬り捨ててしまった。 そして後に暁雨からこの刀を譲り受けた者がこの経緯にちなんで、この名刀を「濡衣」と命名したというのである。 しかし濡衣(ぬれぎぬ)とはそもそも「無実の罪」を意味する語であり、坊主を斬った刀の銘にはどうにもそぐわない。しかも一介の町人にすぎない暁雨が人を斬り殺して何の咎めも受けないとは考えられず、この逸話はどこまでが実話でどこからが創作なのかは至って不明である。
※この「濡衣」の解説は、「大口屋暁雨」の解説の一部です。
「濡衣」を含む「大口屋暁雨」の記事については、「大口屋暁雨」の概要を参照ください。
「濡衣」の例文・使い方・用例・文例
- 濡衣を干す
- >> 「濡衣」を含む用語の索引
- 濡衣のページへのリンク