民法における慣習法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 00:05 UTC 版)
上記の通則法3条とは別に、民法92条にも慣習の効力に関する定めがある。これによると、任意法規(当事者が異なる特約を設定することが認められる規定をいう。)と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者が、この慣習による意思を有するものと認められる場合は、慣習による意思の方が優先して適用される。法令と慣習の優先関係について通則法3条とは異なる規定となっていることから、通則法3条と民法92条との関係が問題となる。 この点については、通則法施行前の法例2条(通則法3条に相当)と民法92条との関係につき、法例2条に規定する慣習は慣習法であるのに対し、民法92条に規定する慣習は慣習法ではなく法規範性のない事実たる慣習と解するのが伝統的な考え方であった。 しかし、この論によれば、慣習法の効力が法例により任意法規に劣るにもかかわらず、法規範性が認められない事実たる慣習は、民法により任意法規に優先する効力が認められる点が矛盾との指摘がある。そのため、法例の規定と民法の規定との関係について議論が生じた。また、法例にいう慣習と民法にいう慣習を区別するのは妥当ではないとする見解も強い。 このため、法例2条と民法92条との関係につき、(a) 法例2条は制定法一般に対する慣習の地位に関する規定であるのに対し、民法92条は私的自治の原則(「契約自由の原則」とも言う。)が認められる分野に関する慣習の地位に関する規定であり、法例の規定の特則であるとする見解(「特別法は一般法に優先する」という法原則が働く)、(b) 法例2条にいう「法令ノ規定ニ依リテ認メタルモノ」の一つが民法92条であり、法律行為の解釈については、当事者が反対しない限り慣習が優先するとする見解などが主張された。 通則法は法例を全面改正して成立したが、民法92条との関係に関する解釈問題に変更を加えるものではないとされている。
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